月別 “ December 2005 ” 列挙

“ December 2005 ” に書き連ねた俺様日記の数々。

- 400yen -

 で、さっき歯医者さんから無事帰宅。
 とりあえず、寒かった。雪もちらつきはじめてた。
 もうそろそろワラジムシ・ジャンパー着ないとダメかねぇ~……
 ってなわけで、こんな季節の到来にも似た感じでじわりじわりと本日の経過を展開させていってみようと思ふのであった……




 昨晩は、徹夜。
 中途半端に寝ると11時の予約までに起きれないかと思ったわけだ。
 しかしながら、9時ごろに『情報ツウ』を見ながらちょっとだけ寝てみようという試みに走った。さすがにもう顔がその不健康さを物語るまでに充分な変貌を遂げていたのに気づいてしまったわけだ。
 そんな顔じゃ、あの歯医者さんには行けない。
 で、案の定、目が覚めたのは10時34分だった。
 一応急ぎながらも、身支度を整えた。《恵佑会》へ行くときにはたいがい部屋着のままなんだけども、《ルーシー》さんへは、ちゃんとよそ行きのズボンを履いている。そのへんがもうすでに両歯医者さんへの意識の違いをはっきりさせている。
 それでも家を出たのは10時49分だった。




 そして到着は11時13分。
 そういえば、《ルーシー歯科医院》さんへは、自分が交わしたはずの予約の時間にちゃんと行ったことがない。それに比べて《恵佑会》へは、多少時間より早く着く。
 やっぱ話せると感じる人がいると、人間の意識ってやつは簡単に緩んでしまうもんなんだなと感じる。
 完全に甘えだ。それ以外のなにものでもない。
 笑って許してくれる人がいるっていうだけで、いともたやすくそこに甘んじるようになる。やがてはそれがあたり前とも感じるようになってしまうことでしょう。
 昔、母が言った。
「許してくれる人がいるのなら、それはもうわがままじゃないんだよ」
 ……たしかに。
 でもやっぱり、その時点でもうすでにそれこそが甘えであり、わがままなんだろうなと思う。
 わがままはわがままで、甘えは甘えでしかない。
 それはきっと、ほかの人が決めることじゃない。自分のなかにあって、自分のなかで、それをどう感じて、どう受け止めるかでしかない意識なんだと思うわけだ。
 いや、このへんはもうたぶん、感覚的なものなんだろうさね。
 で、それを許してくれたり受け入れてくれたりする人が現れてしまうと、そう感じる感覚が麻痺してしまって、そこにすがってもいいもんなんだと錯覚するようになるんだろう。
 たぶんそれは、年をとればとるほどそうなってくんじゃないか。
 甘えるのがヘタくそになってくとも言うけれど、それってきっと甘えるっていう感覚が鈍感になってきてるだけなんだと思う。甘えられないんじゃなく、それが甘えてるっていうことなのかの判断ができなくなってるだけのこと。
 だれかが言った。
 “然るべきときにきちんと叱れる人が、本当の大人”なんだと。




 さて、歯医者だ。
 遅刻は遅刻だ。
 僕は名前が呼ばれるまでのあいだ、『君に読む物語』というニコラス・スパークスさんの小説を読んでいた。
 呼ばれると、今日はなぜだかいつもとは違って、奥の奥の個室に案内された。
 “いつもと違う”っていう状況だと、なぜこうも進んでく廊下が薄暗く感じるようになって、その一歩一歩がビビリンピック短距離走のタイムを縮めていくのか。
 かぁ~なりビビッた。いや、ビビッていったというべきか。
 まあ、ただ単にほかの個室があいてなかったってだけのことっぽかったけども……このへんがもういかにビビッてたかっていうこったな。どんだけビビッてんだよ、俺様は。
 いやぁ~、やっぱ“予想がつかない”っていうのが俺様は一番嫌いだ。不安や恐怖にあおられる。
 だいたいでも想像がつけば、それを我慢すればいいだけの話で、どれだけ我慢すればいいかもわかるんで、特に問題はないんだな。わかるってのは強いな。
 かといって無知ってのも、それと同等か、あるいはそれ以上に強いと思うけど。




 まあ、また例によって例のごとく、担当の人が来るまでのあいだ、案内してくれた人とは別の看護婦さんといいだけ話してた。この人はなんかもう、俺様の担当看護婦さんみたいな気がする。いつもそう。最初からそう。そして、話せる人だ。
 嬉しい限りだ。
 案内してくれた看護婦さんは、担当の歯医者さんが来るまでにまだちょっとかかるということで雑誌を持ってきてくれた。でも僕がそれを丁重に断ると、それ以来来てくれなくなった。思わぬ失態だった。
 でまあ、しばらく経って歯医者さんがやってきた。
「こんにちわぁ」
「あ、どうも。こんにちわ」
「で、どうでした? だいじょうぶでした?」
「いえ。帰ってから痛かったです」
「あ、ホントですか?」
 んな、そんなこと嘘ついてどうすんだよ。アホか、おまえは。
「あ、ちょっとチクチクするような痛みですか?」
「いえ。そりゃもうバッコシです」
「あ、ホントですか?」
 いや、だからな? そんなことで嘘ついてどうすんだっつんだよ。ドアホか、おまえは。
「ええ」
「それで今は。もうだいじょうぶですか?」
「はい。今はもうだいじょうぶです。あ、それであの!!」
 挙手。
「あのですね??」
「はい。どうしました?」
「まだ親知らずのところが原因不明に痛むんですけどもね?? これってなんかなってんじゃないのです?? だいじょぶなんでしょうかね」
「あ、チクチクするような痛みですか?」
「いえ。ズキーンときます」
「あ、それはなにもしてなくてもですか?」
「いや、なにもしてなければだいじょうぶなんですよ」
「じゃあ、なにか噛んだりしたときとかですか?」
「いや、それもだいじょぶなんですよ」
「あ、今ってこっち側使ってます? どんなもの食べてます?」
「ああ、最近はもっぱら流動食ばっかりです」
「ですよねぇ~……どんなときに痛みます?」
「いやぁ~、それが原因不明なんですよ。なんかある特定の状況になったときなのかなと……」
「体温上がったときとか」
「ああ、けっこう、それそうかも。あと寒いとか乾燥とかも関係あるんですかね」
「温度差があると痛んだりですか?」
「ああ、あるかも」
「腫れてるとかっていう感じはありますか?」
「う~ん、どうだろう……いや、でも、それはだいじょぶかと思われますが」
「じゃまあ、ちょっと看てみますね? じゃ、椅子倒しますねぇ~」
 ウィ~ンと椅子が倒れていく。
「はい、よろしくお願いいたします」
 ちっちゃい鏡を口のなかに突っ込んで歯医者さんが覗きこむ。
「……あぁ~、穴はまだあいてますけど、でもなかのほうはもう肉でちゃんと埋まってきてますから、だいじょうぶですよ」
「そうですか。ならいいんですよ。どうもです」
 必ずここに来ると、親知らずの経過見てもらってんなぁ~。
 で、今日は前回やってもらった神経のつづきで、根の治療なんだそうだ。
 その治療の説明を受ける。
 まずはそこにかぶせてあったフタをはずす。チュイ~~~ンってやつで削った。
 最初はずっと看護婦さんがウロチョロしてたから、そのへんのことは彼女にやってもらえるもんだと思ってたけど、それはどうやら甘かったらしい。治療とはいえ甘いひとときを期待するのはまだまだ早いようだ。
 口をゆすいだあと、歯医者さんは小さい鏡の柄のほうで、その箇所をカンカンと何度かたたいた。
「これ、痛いですか?」
「………」
「ちょっと響くとは思いますけど、痛いです?」
「いや……だいじょぶです」
「じゃ、根の治療のほうしますね」




 始まる。
 なにやら看護婦さんと専門用語での早口なやりとりがあった。そのあとで、なんか黒い器具が出てきて、片方を僕の下唇と歯ぐきのあいだに引っかけられた。
 空恐ろしい。なにされんだと、その器具を用意してる段階から首を伸ばしてその光景を覗いていた。
 で、もう一方の先端を、神経を抜いた穴に突っ込んだ。さらには、それをグリグリとしてきやがった。
「これ痛いですか?」
「……う、うん。まあ、だいじょうぶだと思います」
 それから何度か同じことを訊かれるたびに、その器具を穴から突っ込むときとは逆にまわしながら抜いた。
 それの繰り返し……が、しかぁ~し!!
「これはだいじょうぶですか?」
「……あ、痛いです」
「そうですか……」
 それでもやめない。
 そしてついにきた。
「あ、あ、あの、ちょちょちょ、ちょっと……」
「はい?」
 歯医者さんはその器具を口から出した。
「あ、痛かったですか?」
「はい」
「それじゃあ……」
「あ、ちょちょ、ちょっと待ってください」
 まだすぐ続けようとしたので、僕はもう手を上げてそれを制した。そうやって耐えるのがやっとだった。いよいよ目をつぶった。
「だいじょうぶですか?」
 全身から汗が噴き出していた。なにも答えられなかった。手を上げたままだった。
「ちょっと、待ってください」
 すると歯医者さんは、看護婦さんとまた専門用語でのやりとりをはじめた。数字も出てきて、その器具の先端についてるやつの交換ではないかぐらいしかわからなかった。
 痛みはいっこうにおさまる気配がない。
 頭のなかで痛みが痛みの形となってグルグル尾を引いてまわってるような感覚だった。色は黄土色だった。
「だいじょうぶですか?」
「……あ、ああ、なんとかちょっとおさまったみたいです」
「そんなに痛かったですか?」
「ええ、そりゃもう……あんときはもう帰ろうかと思いました」
 その僕の答えに、歯医者さんも看護婦さんも笑っていた。
 本当に暴れそうなぐらいの痛みだった。どうせなら失神したかった。
「なんか引っ張られるような痛みですか?」
「いえいえ、もうズキーンですよ」
 とまあ、その後は、それでもそれなりに痛かったときもあったけども、あの痛みが最高到達点だった。
「いや、あれはこれで根までの深さを計ってたんですよ。そこに薬を入れるために、根のところを少し広げるっていう処置なんです。まあ、そこの神経はもう取ったんでないんですけど、根のまわりにはちゃんと神経があるんで、たぶんそれにちょっと触れたときに痛んだと思うんです」
「はあ……」
 それでまあ、消毒してまたフタをして処置は無事終了したようだった。
 というか、なんか見てると、処置の途中でやめたっぽい気がしたんだが……
「それじゃあ経過を見て、次回は中の状態がよければ、そこに薬入れますね」
「経過を見て、ですか……」
「ええ、そうですね」
「わかりました」
「それじゃあ今日はもう、口ゆすいでくださぁい」
「はい……」




 僕は椅子の力に任せっきりで、自分から起きようとはしなかった。そんな気力はなくなっていた。まだあの痛みの余韻にやられてた。やっとぬるま湯のたまっている紙コップを手にしても、すぐにはそれを口に運べなかった。
「だいじょうぶですか?」
 口をゆすいでる最中に、看護婦さんが気遣ってくれた。
 ぬるま湯を吐き出してから、僕は答えた。
「いやぁ~、全身から汗が噴き出したのなんてもう、ホントひさしぶりの経験でしたよ」
 看護婦さんは笑った。なんか大人びた笑い声だった。
「で、あの。今日って、進展はあったんでしょうか??」
「進展ですか?」
「はい」
「ええ。とりあえず経過を見てっていうことですね。じゃないとわからないので」
「はい。そうですね」
 それから身支度を整えて、そこを出るまでのあいだ、担当みたいなその看護婦さんと話してた。
「お大事にぃ~」
「あ、はぃ~。どうもぉ~」
 僕は一人、ぶつぶつとひとり言をつぶやきながら、待合室に出るまでの細く薄暗い渡り廊下を歩いていった。
「……いやぁ~、痛かったわぁ~。マジで……マジっすか、これ……」




 また待合室のソファに腰を下ろすなり、すぐにうなだれた。
 今日の受付の女の人は、前回来たときとは別の人だった。前も最初はいたんだけど、途中から別の人と交代したらしかった。
 今日の人は、すこぶる可愛い感じの人だ。たぶんどっかのモデルとか言われたら、“へぇ~、そうなんだぁ~”って中途半端に納得すると思われる。
 名前が呼ばれた。
「はい、はい、はいはいぃ~」
 受付に行った。
「え~っと、じゃあ今日は400円ですね」
「あ、はい……え?? 200円ですか??」
「え? 400円です」
「4ですか??」
「はい、400円です」
「あ、400円でいいんですか??」
「ええ、根の治療ですよね?」
「ええ」
「ですよね。根の治療のときってあんまりお金かからないんですよ」
「ほう!! あら、そうなんですか」
 あ~ん、なかなかいい滑り出し……この人はちょっとほかの人よりとっつきにくいかなぁ~と思ってたんだけども、もしかしたら一番親しみやすい感じかと思われた。
「え~っと、じゃあ松田さん、次回の予約なんですけど」
「はい」
「来週の火曜日はいかがでしょう?」
「ああ、火曜日ですか?? う~ん……最短で」
「え? 最短ですか?」
 受付の人は笑っていた。
 どうやら“最短で”という言葉は、彼女が予定していた返答リストのなかには含まれていなかったんだろう。
「最短、最短……最短ですかぁ……」
 受付の人は、ノートみたいなののページをめくりはじめた。
「……でも、根の治療ということですので、何日かはあけないといけないので。早くても月曜日か火曜日になっちゃいますかねぇ~」
「ああ、じゃあ最短で月曜か火曜ってことですよね」
「ええ、そうですねぇ~」
 そう言ってこちらを見上げる彼女は、なんとつむらな瞳なんでしょう。
「でも月曜日だと、12時までなんでそのあとっていうことになっちゃうんですよぉ」
「え?? それって夜じゃないですよね??」
「あ、はい。午前中はもう予約でいっぱいなんで、午後からになっちゃうんですよ」
「あ、じゃあ、火曜日で」
「はい、じゃあ火曜日で。時間は……10時からなんで、11時ごろなんてどうでしょう?」
「あぁ~……最短で」
 またなにげにクスッと笑った受付の女の子。
「はい。じゃあ10時で」
「はい。よろしくお願いいたします」
「では来週の火曜日の10時ということで」
「あ、はい、どうもです」
 とまあ、診察券と保険証を受け取ってはみたものの、すぐ隣の棚に並んでいるものを眺めていた。
「あ、あの」
「はい?」
 と、受付の彼女がなんとも突然勢いよく立ち上がった。ちと驚かせたか??
「あ、あのですね?? この歯垢染色なんとか剤とかいうやつって、どうなんですかね」
「どうというと……」
「いや、いっつもテレビで見てて、いつか自分も使ってみたいと思っててですね??」
 あの磨き残した歯垢が赤く染まるっていう、あれだ。
「ええ、これがジェルタイプのやつで、こっちが錠剤のタイプで、であとこっちが液状のタイプなんで、いろいろ種類あるんですよ」
「ええ、ええ、そうなんですね。でもこれって、ホントにあんな感じで赤く染まるもんなんですかねぇ?? 効果ってあるんでしょうか??」
 それからしばらくのあいだ受付の女の子に説明をしてもらっていた。何人かの患者さんが来たんだけども、ちょっと気にしただけで構わず話しつづけておった。
 ホント、一番話せる人かもしれまいに……
「……まあでも、毎日じゃなくても時間あるときに使ってみると磨き残しとかけっこうわかるんで、効果はあると思いますよ?」
 で、結局、ジェルタイプのを1つ買ってみた。とりあえず、これを使うと2時間ぐらいずっと口のなかがピンク色に染まったままになるらしいので、ホント時間のあるときに使ってみようと思ふ。
 あと親知らずとか神経のこともあるんで、うがい薬みたいな口腔内消毒液ってやつとかもあったりして、もうちょっと話してようかとも思ったけど、それはさすがにやめた。
 帰り際、受付の女の子がちょっと背後の壁を振り返った。治療から待合室に戻ってきたときには、もうすでに誰もいなかった。
「あ、そういえばもうお昼休みの時間ですか??」
「え?」
 驚いていた。
「あ、ええ、はい。そうですね」
「そうですか。お疲れさまです」
 僕はそう頭を下げた。
「お大事にぃ~」
「あ、はいぃ~。どうもでぇ~す」
 気分も上々で僕は歯医者さんの自動ドアをくぐった。




 “食べるにぼし”を買って帰ってきた。

  • December 1, 2005 3:52 PM
  • 松田拓弥
  • [ ゲロ古 ]

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