月別 “ June 2008 ” 列挙

“ June 2008 ” に書き連ねた俺様日記の数々。

Wordpress と Movable Type 比較検討。

 ここのところ、“ Wordpress ” がたいへん気になってきておるのだよ。
 やっぱ、“ 再構築 ” がうっとうしいし、めんどくせぇの。

 なんで更新が滞ってくるかっつーと、どうしてもあの “ 再構築 ” を待つっていう待機時間に嫌気が差すわな。
 記事一つ書くにしても、たかが1行とか2行だけ書きたいことがあったとて、再構築には平等に時間がかかってしまう。
 ダイナミックパブリッシングっていう手があるにせよ、それもなんかイヤ。プラグインとか入れてみても、たいした変わらない。
 テンプレートの変更なんてしようもんなら、全体の再構築ときたもんだ。ちょっとした変更でも全体の再構築だし、なんかちょっと気に入らない部分があったら、またそこ修正して全体の再構築。

 再構築、なっげぇんだよ。
 いやホンット、なっげーの。

 PHP じゃなくてもダイナミックパブリッシングしてくれるバージョン出してくださいよ。
 いや、マジで。
 そしたら絶対、Wordpress に顧客も奪われずに、それからはもうあらゆるジャンルの CMS でナンバー1独占するから。
 これ絶対だって。


 そう、そこでやっぱり目を釘付けにされるのが、Wordpress なんだよなぁ~……
 その “ 再構築 ” がまったくもって不要ときてる。
 なにするんでも、再構築なんて必要ないの。
 プラグインを入れても、なんかテンプレートの変更するにしても、再構築一切なしで、保存するだけでズバッと反映。
 それは魅力でしょうよ……ましてや Movable Type で再構築の地獄を味わえばさ。

 “ 再構築 ” って、Movable Type の唯一かつ最大の弱点だな。
 それ以外では、やっぱ Movable Type のほうが、あらゆる点で勝る。コンテンツの管理機能にしろ、タグ機能にしろ、その使い方にしろ、キーワードにしろ、テンプレートの柔軟性にしろ、ソースの書き方にしろ、なんでも。
 やっぱ直接 HTML で書いていけるっていうのが、俺様としてはかなり嬉しい。

 そうなのよ。

 じゃあなぜ、Wordpress にしないかっつったら、そこなのよ。
 テンプレートをカスタマイズするのに、いちいち PHP で書かないといけないっていう点。
 んなもんわかんねぇの。PHP なんてわかんねぇのよ。
 “ echo ” って、なによ。なんで吐き出すときにはあるのに、ソースにはタグがないんだい? 一つの文章書くのに、なぜに何行も何行も “ echo ” だの “ ,); ? ” とかでくくって書かないといけない?

 めんどくせぇよ。

 でもね?
 やっぱしィ~、ここへきて再構築のない Wordpress のほうがいいかなぁ~とか思ってみてるわけだ。
 プラグインを入れれば、なんとなくいろいろやりたいこともできそうな感じだし、PHP が面倒なら、それを覚えりゃ Movable Type の致命的な弱点を克服できるわけだしな。

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親父。

 今さっき親父に逢ってきた。
 たくさん話した。本当に。たくさん。


 あんなにも親父と、“ ただしゃべる ” っていう空間をともに過ごしたのは、たぶん俺様が生まれて親父と過ごしたなかでも、初。たぶんじゃない。これ、間違いない。
 おれと親父以外、本当になぁ~んにもない部屋で、なぁ~んの音もなく、おれと親父の声しか聞こえない時間の上にいた。

 ひっさびさに逢った親父は、なんかむしろ、俺様の記憶に居座る親父よりも、見違えるほど活き活きしてた。
 気に入らねぇ……なぁ~んか、気に入らねぇ。

 どうやら親父は、本当に会社はやめたらしかった。
 それを聞いて、俺様は、なんだか安心した ──── いや、そんな親父に感心した。
 しばらく見ないうちに、親父も成長したんだな、と。

 むかぁ~し昔、親父は “ おれにはこれしかできねぇんだ ” とずっと言い張ってた。
 でも、それを、やめた。やめたんだ。
 過程はどうあれ、それをやめるという決断には、それはそれは大きな勇気がいっただろうし、親父にとっては、あまりにも大きすぎる大きな一歩を踏み出せたんだなと感じた。

 始めるのは簡単だ。その気になればいいだけのこと。
 でも、それをいざやめるってなると、いろんなことがからんでくる。
 親父にとっては、それが生き甲斐で、おれたちという子供たち、母親も当然含めた家族を養っていくっていう責任がともなった。
 みんなバラバラになった今でも、変わらずにいたはず。
 それをやめるっていうことは、全然違う次元でこそあれ、親父の人生にとっては、きっと同じぐらい、土俵を変えた視点で見れば、それ以上に大きな割合を占めてた仕事。
 それを親父は、やめてた。
 あまりに大きすぎる喪失だったと思う。

 でも今の親父は、なんか活き活きしてた。
 今はどこぞのパークゴルフで、ゴルフコースを管理してるらしい。
 どこか淋しげな表情で “ 今にして思えば、もっと早くにやめときゃよかったんだけどな ” とは言ってたけど、それは違う。
 だから俺様は、正直に “ それは違うだろう、親父。そやってあのときめちゃめちゃがんばったからこそ、今そうやって人づてが生きてるんだべや。 ” と言った。
 フォローでも気休めでも慰めでもなんでもない。親父のがんばりは知ってる。実際に自分の目で見て、一緒にそばでやっていて肌で感じてる。
 そう、だから今でこそ “ だからよぉ~、社長は3人もいらねぇんだって社長に言ってやったんだよ、おれ ” なんて話す親父と笑い合えた。


 まあ、そんな親父のなにが一番気に入らねぇって、若ぇんだよ、あいつ。
 自分でも自信たっぷりに言い放ってたけども、“ 60に見えねぇだろ? ” って、ごもっともだ。返す言葉もなかった。
 俺様より髪の毛あんじゃねぇのかっていうぐらい髪の毛もフッサフサで、本当に悩み無用。
 あまりに変わり果てた親父の姿を想像してドッキンドキンさせてた俺様の心臓が、逆にドキドキさせられたぐらいだ。
 “ あまりにもヨボヨボで変わり果てた姿になってたらどうしようとか思ってたのに ” とか言ったら、からっからの太陽ばりに笑われた。
 彼、きっと、石原裕次郎なんだと思う。いや、マジで。

 いないわけがないと、今回家に着いて初めて親父に電話してみたら、寝てた親父。
 赤ちゃんみたいな声で応答開始。
「あ、寝てた?」
「あ、拓弥か? あ、うん、寝てた……」
 本当にアニメにしか出てこないような、あの “ ムニャムニャ ” っていう擬音を今日、初めて生で聞いた。
 だって、朝の5時ですもん。
 姉ちゃんの話では、仕事上、朝の4時半から5時ぐらいに起きてるって聞いてたから、その時刻に行ったわけだ。
 しかしながら俺様も人の子。そんな親父も、やはり人の子。
 梅宮辰夫さんかよってなぐらいの親父でも、寝るときは寝る。息子ながら、どんだけ当時の大スター食ってんだって気がする。もし寝てないんなら、もはや彼は人間じゃない次元。
「ちょっと出てこいや」
「は? 出てこいってどこによ」
「家の前。今おれ、来てるから」
「はあ? おま……おう、ちょっと待ってれ」
 郵便受け開けっぱで覗きまくってたら、記憶どおりに寝室から登場するかと思いきや、奥の居間から登場。
 なぜかオレンジ色のゴルフ用シャツに黒いスラックスといういでたち。そして、微妙に整った寝ぐせ。
 恐ろしいミスマッチに、さすがの俺様もクラクラした。
「おう ──── 」
 玄関のドアが開くと同時に、親父の第一声。

「 ──── 入ればいいべや」


 あ、そうそう、親父はどうやらそのまま住んでたらしい。
 朝の7時半きっちりに起床して、だいたい8時ぐらいに仕事に行くという記憶のまんまだったもんだから、俺様が誕生日に行った日には、もうすでに今現在の仕事に出たあとだったらしいのだな。
 しかしながら、今回もまた行き損ってのは、さすがに行く気も失せそうだったため、コーリングしたわけだ。

 で、まあ、最初はしばらく母親と同じような質問と応答。母親とのひさびさぶりの倍以上だったもんだから、その重さも倍以上だったけども。
 親父、しゃべる……とにかく、しゃべる。
「おまえ、おれとしゃべってんだから、おれの顔見てしゃべれ。そっぽ向いてしゃべるやつがあるか」
 おい親父、あんた、そこまでか。

 親父は相変わらず、そのへん厳しい。
 俺様を知る人の大半は、それを聞くと “ 信じられない ” とか “ だからこうなちゃったんだね ” とか言ってくれるけども、親父はたいへん厳格。
 行儀、マナー、人間関係、責任感、協調性、挨拶、人情、義理、自分以外の人への思いやり、しつけ、優しさ。
 常識だのなんだのよりかは、“ 人間として ” っていう部分にたいへん恐ろしい。
 まま、職場のほかの人の仕事のしかたとかで、さんざんにこやかに愚痴ってたけどな。
 生粋の職人肌で、病的に責任感の強い人だ。それでいてエンターテイナー。
 やっぱり裕次郎さんなんだと思う。
 “ おれもワンマンだけど、おれ以上にワンマンなんだよ ” と、自分で笑いながら言ってた親父。
 息子の知る限り、親父以上にワンマンなワンワンは、いまだかつて見たことがない。

 相も変わらずあの精悍さ。
 朝の5時にいきなり起こされたにも関わらず、目の下がちょっと腫れてるぐらいですむ顔の歪み。“ あんたにとっての年ってなに? ” って訊きたくなる。老衰っていう意味と完全にすれ違ってる。
 俺様とは対照的な肌の色で、どこのサーファーよってぐらい黒い。
 かっけぇ。
 あいつ、マジかっけぇ。
 嗚呼、気にいらねぇ……

「でもやっぱおまえも大人になったんだな」
 ふと親父が言う。
「これだけ親に意見できるようになったんだからな。おまえももう30になったなんだな」
「いや、それは親父が変わったからだろ? 円くなったからだろ?」
「そうかぁ?」

「それにしてもあいつはホント、常識がねぇっていうか、世間知らずっていうかな ──── 」
 誤解を恐れずにその前後関係を省きつつ、親父が母親のことをそう言った。
「親父、それは違うんじゃねぇか? ただ自分の気持ちに素直なだけだよ、あの人は」
「…………」

「いやぁ~、おまえに怒鳴ったことなんかあったか? そんなことねぇと思うけどなぁ~」
「いや、おま……おまえ、ふざけんなって」
 ついに親を “ おまえ ” 呼ばわり。
「違うじゃん。違うんだって。だからな? おれにはさ、怒鳴った記憶すらないんだって」
「……」

「……あ、そうだ。だからおれ、これ30を機に訊いてみたんだけどさ」
 前の会話とはつながってない。
「あーちゃん、親父と結婚して幸せだったかって訊いたら、“ それはもちろん。いろいろ勉強させてもらったし、感謝もしてる ” って言ってたぞ? “ 今思っても幸せだったなぁ~って思えるし ” って。それ聞いておれ、おぉ~、おまえら、なんかすげぇじゃんて思ったもんな。それあーちゃんから聞いて、聞けたからこないだの誕生日がおれにとって素晴らしい誕生日になったんだよ」
「……ンフ~」
 そう腕を組んで右斜め前のソファでふんぞり返る親父。
 “ ンフ~ ” じゃねぇよ。なんだよそのまんざらでもねぇみたいな顔は。
「……あ、そうだ。そういえば前な?」
 おまえ、なにそこで食いついてんだよ。今までふんぞり返ってたじゃん。なにを身ィ乗りだしてきちゃってんのよ。
「あいつ、一回だけわけのわかんねぇこと言ってきたことあったんだよ……」
 アホだ。
 あいつ、アホだ。
 絶対アホだ。
 気に入った。
 さすがは俺様の親父だぜ。


 とまあ、ホントいろんなことを話したわけだ。
 今日も当然仕事なわけで、チラッと壁の時計を見上げた。
 俺様も本当は、もっともっと時計をあげたらさっさと撤収する予定でいた。あんまり長居して話し込んだら、泣くと思ったから。
 気づけば1時間以上も一緒にいて、ただただしゃべってた。いや、親父の話を聞いてたっていったほうがしっくりか。
 耳を傾ける価値の充分にある話だった。
 親父の言い分。親父の気持ち。親父の想い。親父なりの気遣いや配慮。そして思いやり。
 姉ちゃんに対して、おれに対して、そして今とこれまでの家族みんなに対して。
 どれもこれもが、不器用な親父の言葉でつむがれる優しさだった。
 涙を欲しがらない感動があった。

「あ、じゃあ、親父もそろそろ仕事だべ? んじゃあおれ、そろそろ帰るわ」
「あ? いんだ。ひさびさに会えたんだからいいべや、ちょっとぐらい」
「よかねぇだろう。まあ、おれもまた明日仕事あるし」
「いや、そりゃわかってる」
「っつーか眠いんだよ。だから帰って寝るわ」
「いいべや……ここで寝てけばいいべや」
「ッハ、アホか」

 オォ~~~~~~~~~~!!!!
 あの親父もそんなキュートなこと言えるようになったのか!!!!

 ケータイいじりながらボソッと漏れ聞こえてきた親父の声。
 すっげぇキュートだったな、あんときの親父。

 嗚呼、親父。
 嗚呼、やっぱ行ってよかった。
 そしてやっぱり、親父は、別れ際、手を振らなかった。

 親父。
 ああ、あの親父がな ────

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  • June 27, 2008 10:39 AM
  • 松田拓弥
  • [ 家族 ]

MT4.1 にて Shadowbox.js と Lightview との比較。

 結論。

 Shadowbox は、とっても使える。
 ブラウザに依存することなく、どれでもきっちり表示してくれる。
 ファイルタイプも幅広くカバー。
 たいへんけっこう。

 Lightview は、使えない。
 表示が、なんだかんだでかなりブラウザに依存するようだ。
 IE では、表示されない。されても、レイアウトが恐ろしいことになるらしい。ぐっちゃぐちゃになるか、いっちゃん上にゴチャ~とか、いっちゃん下にゴチャ~とかなりやがった。
 Firefox では、問題なし。

 以上の概略により、いま一度 Shadowbox に戻すことに相なりもうした。

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記念。

 とまあそんなわけで、こちらからのサプライズのはずが、逆に俺様のほうがサプライズな 30th anniversary になってしまった先日。
 当日の記念写真を残しておこうと思ふ。

 それはなぜなら、なんでもかんでもすぐに捨ててしてしまう俺様だからだ。

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今日は俺様の30歳のバースデイ。

──── 今年の誕生日は、30歳になるわけだし、なにかお互いの心に残るような素敵な誕生日にしたい。

 だから、“ 俺様の命感謝デー ” ということにした。

 プレゼントを渡す。百円均一で買った525円の腕時計。
 そして、おれと、家族一人ひとりに、それぞれ直筆で書く初めての手紙を添えて。


 手紙は、本当に渡しに行く時間なんてあるんだろうかっていうぐらい、時間がかかると思ってた。
 なにせ、学校の行事でもなんでもないのにペンをとるなんて、俺様にとって生まれて初めてのことだ。今の状態になってからなんて、絶対にない。
 姉ちゃんには昔、入院してたときのお見舞いとして、『待つ』っていうタイトルをつけた詩を書いて渡したことがあった。
 でも今回は、わけ違う。
 姉ちゃんへの手紙じゃなく、俺様からの手紙。書く前から気が狂いそうだった。

 書き出す前に、ルールを決めた。
 とにかく、1枚に書く。
 途中で字を間違っても、絶対に捨てない。グチャグチャのまま渡そう。

 紙は、そのままプレゼントの包装紙に使うからってことで、スクラップブックを破ってものにした。
 普通紙だと、表も裏も真っ白で、なんとなく清潔感がありすぎるような気がした。


 まずは親父。
 最初っから、いきなりハードルが高い。
 もう何年も会ってないし、連絡もとってない。最後に会ったときも、実家にいたときの言葉がなんとも重かった。
 ……いきなり失敗。
 そっから書き出したら、絶対に5枚以上になる気がした。
 絶対のルールは、“ 1枚におさめる ” こと。言葉を間違ったんじゃなくて、伝えようとしてることがあまりに多すぎた。

<素直に思ったこと書けばいいや>

 親父が大変なとき、まあ今もそうだけど、おれはいつも自分が好きなこと、自分がやりたいことしかしてこなかった。
 でも、そんなおれも、まわりの人から少なからず “ ありがとう ” と言ってもらえる人間になった。
 だから今、親父にも言いたい。
 ありがとう。


 次に母。

 もう30歳。
 もう離れて暮らしてるほうが長くなってしまったかな。
 でも、なんだかんだであーちゃんが一番ちゃんとおれのことを理解してくれてるのかなと思う。
 おれもやっと、この年になって理解するっていうか、認められるようになったのかな。
 だから、ありがとう。
 今日は、“ おれの命感謝デー ” っていうことにした。
 おれはなにより、この命を大切にするから。


 最後に姉ちゃん。

 おれは、なんだかんだで、親父たちから逃げだしたんだと思う。
 ごめん。
 30歳になって今、素直なところを言ってみる。
 こんな弟を許してほしい。
 おれは、姉ちゃんの強さと、その優しさに憧れてる。
 おれの姉ちゃんでいてくれて、ありがとう。

 会いに行く順番に書いていった。
 たしかそれぞれに、そんなくだりで書き出したと思う。あんまり憶えてない。
 写真でも撮っときゃよかったかな。

 まま、意外に、1時間もかからず書き終えた。
 前の日も二時間しか寝てなかった割に、俺様のペンは饒舌に語った。書きはじめたら、なぜだかものすごく脳ミソがすっきりしてきた。
 そしてそれぞれの手紙の裏には、この安もんの時計にこめた思いも、それぞれへの言葉で書き添えた。

 有名なブランドじゃないし、525円なんてすごく安い。
 でも、今でも、そしてこれからもずっと均一の絆で結ばれてると信じてる。
 この時計は、おれの家族4人、みんなが持ってる。
 おれにとっては、なにより大切なブランドだから。
 それは血じゃなく、それが家族としての想いだから。

 その包みは、4本の輪ゴムで、それぞれにクロスして重なりあうようにして止めた。

 思いのほか時間があまった。
 頭をワックスでセットしたり、たかが1時間のあいだに、4本ぐらい煙草を吸ったと思う。

 最初は親父 ────
 何年も前に会ったっきりだ。連絡もとってない。
 実家を出て、それからしばらく経って、とある用事で親父がうちに来たとき以来。それを抜けば、9年ぶり。いや、6年か。

 その年月は、自分が思っている以上に長い。老化は、それ以上に早い。
 ひさびさに会ってみたいという気持ちはあったけど、あの精悍な親父の変わり果てた姿を見る怖さもあった。
 ひどく緊張した。
 家を出る前から、ずっと俺様の心臓はドキドキしっぱなしだった ────


 親父に会いに行く。
 一緒に住んでたころの記憶を頼りに、仕事前、8時ごろに着けば、親父もまだ家にいるだろうという見当で自転車をこぐ。
 ちょっと早く着いてしまう。

 玄関の外のドアを開けて、左手の壁についてるチャイムを鳴らす。
 ちょっと経って玄関が開き、真っ白なTシャツとパンツ姿の親父が顔をだす。
 親父が俺様の顔を見て、一瞬空気を飲みこむ。
「………」
「おう」
 必要以上の気軽さで俺様が声をかける。
「ひさしぶり。親父」
「お、おう……まあ、入れや」
 途中で一度止めて手の位置を変えながら、もう一度親父がさらに大きくドアを開いてくれる。
 俺様はなかに入っていく。
「おう。よく来たな」
「ああ」
 親父と握手を交わす。前にちょっと寄ったときもそうだった。
 実家のにおいをかぎ、玄関の靴を眺め、そこから居間へとつづく短い廊下の先にある居間のドアを見やる。その上の天井の修理跡を確認する。
 昔、大雨だったとき、寝てるといきなり階下でズドーン、ジャバーってものすごい音がした。慌てて見におりて行くと、廊下が水びたしになっていた。天井の1メートルぐらい、廊下の5分の1ぐらいのタイルが、丸ごと床に落ちて俺様の足もとまで濁流で流されてきていた。
「おまえも来るんなら電話ぐらいよこせや」
「あ、わりぃ」
 俺様も親父のあとから居間に入る。

 あまりにもすたれた実家の居間。
 病的に几帳面で、掃除には口うるさい親父のことだ。ある程度きれいにはしてるだろうと思っていた。
 親父が、昔と変わらずテレビの前に並べられたソファの左側、テレビの画面と向かい合う側のソファに腰をおろす。
 俺様はその真向かいとは一つずらした位置に座る。背負ってきたリュックを、親父とは反対側のソファに置く。
「誕生日、おめでとう」
 親父がソファから少し身を乗り出して俺様のこの日を祝ってくれる。
「ああ、ありがとう」
「元気にしてんのか?」
「ああ。めちゃめちゃね」
「そうか。ならいんだ。それにしてもひさしぶりだな」
「ああ」
「でもおまえの誕生日だべや。どしたのよ」
 親父は、実はよくしゃべる。俺様とは違う。
 彼は根っからの社交人だ。そして、本人も楽しみながら人と言葉を交わす。人を楽しませるのもうまい。
「ああ、だから来たんだよね。今日は」
 親父はわけがわからないという表情を見せる。
 俺様はリュックから包みを取り出す。
「はいこれ。おれから」
「なによ」
 親父は、驚きだけを俺様に見せて、嬉しさは静かに引っ込めるように俺様からそれを受け取った。
「開けていいのか?」
「いや。まだ」
「なんでよ」
「おれが帰ってからしてくれ」
「なんでよ」
「恥ずかしいべや。おれが帰ってから開けて一人で泣けや」
 親父のほうが照れたように笑う。
「今日っておれの誕生日じゃん?」
「ああ」
「だから」
「あ? おまえの誕生日だからこれくれるのか? なんでよ」
「おれが生まれてきたことへの感謝の気持ち。そういう誕生日もあっていいんじゃねぇのかなと思って」
 親父が嘲笑のように鼻を鳴らした。それから、少し視線がうつむいた。
「おう。そうか」
「うん」
「ありがとう」
「いや」
 俺様はリュックのチャックを閉め、おもむろに立ち上がる。
「なによ。ゆっくりしてかねぇのか」
「ああ。ほら、あと詰まってるから」
 俺様は腕を人差し指でかるくたたく。
「それに、そろそろ親父も仕事だべ? おれ、帰るわ」
「そうか」
 まだ座ってる親父を残して、俺様は居間のドアに向かって歩きだす。

「また来いよ」
「ああ」
 俺様は玄関で靴を履き終え、親父を見上げる。手には俺様が渡した包みを持っている。
「そのうちな」
「おう」
 親父が手を差し出してくる。おれたちはまた握手をする。
「んじゃ」
「おう。ありがとな」
「ああ」
「んじゃ、またな」
「ああ」
 親父は別れるとき、絶対に手を振らない。ただその場に突っ立ったままで見守っている。


 母親の家の記憶があまりに曖昧ではあるものの、なんとかたどり着く。
 でも、アパートの前に着きはしたものの、部屋の番号がわからない。やむなく俺様は母親に電話する。
「もしもし?」
「あ、おれだけど ────」
「おはよう」
「あ、おはよう」
「どしたぁ~?」
 俺様の母親は、普段はテキパキきっちりとした口調で話すけども、俺様とこういう状況で話すときは、必ず語尾が伸びる。ルンルンなんだな。
 事情を説明すると、部屋のドアから母親が顔をだす。
「えぇ~!? おまえ、なにやってんのぉ~」
「来た」
「それはわかってるっつのぉ~。ほら、入りなぁ~」
「ああ」

 居間に入ると、俺様が生まれたときに住んでたアパートの一室と同じ感じがする。そこには “ 生活 ” があって、肌で感じる優しさがある。
 そこには姉ちゃんもいる。
「あ、たっく~ん」
「おう」
 母親に顔を向けると、そんな俺様たちを笑いながら見ている。
 目が合う。すぐに険しい表情になる。
「座りな。ほら」
 母親はいつもそうだ。嬉しさが心配の上に重なって、どちらもが同時に表れる。
 俺様が小さなテーブルのそばに座る。
 姉ちゃんは向かいに座ってこちらを向いている。隣には、今まで母親が座っていたと示すように、テーブルのそこにコーヒーカップが置いてある。ブラック。
 そのへんは俺様は、母親からの遺伝子は受け継いでない。
「来るんだったら電話ぐらいよこしなさいよね」
 ここへ来ると、どこぞのアイドルかよってなぐらいの待遇。全国民の最大の娯楽であるテレビに勝ち、みんなが俺様のほうに体の向きを変え、俺様を中心に取り囲む。
「ああ」
「こっちなんてまさか来るなんて思ってないから、なんも支度なんてしてないし、ビックリするじゃんよぉ~」
「サプライズ」
「なんだそれ」
 そこからしばらくは、いつもどおりの母親から質問に答える。
 元気にしてたか。風邪はひいてないか。仕事は順調か。ちゃんとご飯は食べてるのか。
 そして、その答えもいつも同じ、すべて “ イエス ”。

「拓弥、誕生日、おめでとう」
 母親が一つひとつの言葉を噛みしめるようにゆっくりと言う。
「ああ、ありがとう」
「たっくん、誕生日おめでとう」
 姉ちゃんの口調はいつもと変わらずあっけらかんとしている。
「ああ、ありがとう」
「でも誕生日だぞ? どうしたの」
 母親が笑いながら言う。
 姉ちゃんが言葉を継ぐ。
「彼女いなくてまた一人なのかい」
「いや」
 俺様は近くにおろしたリュックを引き寄せる。
「そうじゃないさ。今日は違うんだな、これが ────」
 母親と姉ちゃんの顔とを見比べながらジッパーを開ける。
「──── 今日は、おれの誕生日だから来たんだな」
 二人ともわけがわからないといった表情をしている。
 俺様はさらに続ける。
「んまあ、じゃあ先に……」
「……はいこれ」
 二つの包みを同時に取りだし、“ 姉 ” と書いたほうを姉ちゃんの前に、そして “ 母 ” と書いたほうの包みを、母親の前に置く。
「え? なにこれ?」
「タク、なに」
「いやね? 今日っておれの誕生日でしょ? だから、今日は “ おれの命感謝デー ” ってことで。家族におれからプレゼントをと思ってね」
「えー」
 二人は同時に、渡したプレゼントから俺様に視線をあげる。
「男前だろ?」
「いやぁ~、男前だわ」
「たっくん、これ開けていいの?」
「ノー。帰ってからにしてくれ」
「はい」
「あ、そういえば ────」
 母親の表情がまた変わり、思いだしたように言う。
「──── タク、ご飯食べたのかい?」
「いや」
「またかい。ちゃ~んと食べなきゃダメだって。じゃあ、なんか作るかい?」
「ああ、じゃあ、いただこうかな」
 そしてひさびさに母親の手料理を噛みしめながら、姉と母と息子と弟でゆっくりとのんびり談笑する。

 この日は陽が落ちてからの帰宅。
 俺様の家族にとって、そして俺様にとっても、お互いの心に一生残る素晴らしい一日なのである。


 そう、30歳の誕生日はそんな素晴らしき日に、そんな一日に、そうなる予定だった。
 そうなるはずだったのに ────────

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  • June 20, 2008 10:01 PM
  • 松田拓弥
  • [ 変化 ]

はずれた左クランクを日陰で修理。

 そして同日、17:04 のことである。

 “ · チャーチャーチャーチャーチャ……ぃィイぇ~~~~~~~~ ”

 『嗚呼!浪漫飛行』に起こされた。
 それは、一度目の目覚ましに設定してる着信音。んだども、それはもう 16分前に止めている。
 少なくとも三回、無視しようとした。
「……ワイぃ?」
「あの、今日の朝に自転車のクランク部分の件でメールいただいてたのでお電話さしあげたのですが……」
「あ、ああ。はい……はい」
 無論、まだ布団にくるまって両目をかたく閉じ、より暗いほうへと横向きの状態。

 ≪サイクル ネットワーク 楽天市場店≫の大場さんだった。
 先日もげたペダルの件である。
 大場さんは、いつもこれぐらいの時間だ。バイトだからちょうどいいっちゃ~いいんだけど、まだまだ二度目の目覚ましが鳴る時間でしかない。
 7割寝てた。さっさと修理してまたおまえに馬乗りになってやるぜぇと心急いていた。やっと電話がきた。

「あの、今、お時間だいじょうぶですか?」
「はい」
< ──── でもやっぱ、うぜぇよな>

 俺様の現行愛車3人目だけどメインの “ GIOS LIEBE ” のもげた左クランク部。おれはバスケ部。小学校から専門学校卒業まで。ずっと。ずっと。ずっとずっと。そう、ずっとだ。
 朝、その修理法を写真の添付されたメールで “ ご指導お願いします ” とおうかがいを立ててたのだな。
 んで、こういう文章じゃ大変伝わりにくい旨、メールじゃなく、わざわざお電話でご指導くれたわけだ。

「……あの、今お時間だいじょうぶですか?」
「はい」
<やっぱうぜぇ」
「だいじょうぶです。で、なにが専用の工具が必要なんですか?」
「ええ、そうですね……」

 俺様の “ レフトクランクの修理大作戦 ” は、その翌日、忘れてたのを忘れて、それをあたかもたった今思いだしたかのようなフリをしてから、家の前、玄関先にて敢行された。

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  • June 19, 2008 7:28 AM
  • 松田拓弥
  • [ 自転車 ]

B 型と O 型。

 【 B 】

 とっても思慮深いとは思う。
 でも、その場限りのこと。長い展望に目を据え、腰を据えたものじゃ~ない。
 思慮深いのかもしらんけど、考えが浅い。そしてそれは、それ以上を達観してるようで拒絶してる。
 “ 考えなし ” とか “ わがまま ” とか “ マイペース ” とか “ なに考えてるのかわからない ” とかその他もろもろの悪い言われようは、そういう部分なんじゃないだろうか。
 考えてるけど、次に会ったとき、状況が変わったとき、あるいはそれが自分にとって都合が悪くなったときには、こともなげに言うことが変わる。
 “ ひらめき ” って言うのかね。
 まま、一番わかりやすい例を挙げれば、“ 自分はいいけど、人のそれはダメ ” ってやつだろうな。

 ヘマをする。
 “ 約束 ” っていうものが、なんら意味を持たない。
 それを知っててか知らずになのか、だからかあんまり、はっきりと断言するようなそれはしようとしない。
 “ 濁し好き ” とでも言えようか。“ 意味深 ” とか “ 含み ” とか “ ミステリアス ” っていうのが好きでさぁ~ね、B 型の人っつーのは。
 自分自身のことはちょっと濁したあと、そっからさらに踏み込んでくるような一歩がなければ、あまり自分からはさらそうとしない。
 たぶん人間関係を築く上での口グセは、“ 訊かれたら答えるけど、訊かれてないから ” ぐらいのことなんじゃねぇの?

 口は堅いかもしれないし、保身っていう意味で見れば、それはすごく強い。
 でも、そこに少しのほころびができてしまうと、なにかしら自分に都合のいい理由をつけて、破綻する。
 でも、その理由の一点張りですがろうとする。
 自分から破綻させてしまうわけだ。
 でも、それが本当に破綻してしまったあかつきには、自分に都合の悪い理由で自分を責めはじめたりもする。

 そのときは一生懸命考えた結果、その答えになったんだけども、またその場で考えたら、別の答えが出てきたっていうことなんだろうな。
 いちいちその場その場でその場になって考えるから、毎回毎回違う。
 だから、その場限りのおしゃべりとか短い付き合いなら、B 型の人が一番楽しい。
 長い期間で見ると、飽きてくる。
 これ不思議なもんで、その場その場で言うこともやることも変わるのに、逆にそういうワンパターンみたいに感じてきてしまうわけだ。

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  • June 17, 2008 2:18 PM
  • 松田拓弥
  • [ B型 ]

自転車のペダルがコロリ~ンってはずれたよ!!

 雨である。
 いつも以上に暗い。
 バイトへ行く途中、いつもどおりにこいでたら、左のペダルがとれた。
 降りつづける雨粒とは裏腹な、路面の水面のような穏やかさだった。

 コロリ~ン……

「 ──── ん? ……ぬォ ──────── う!!」


俺様の手は別にカッコつけてるわけじゃなくて、バイト用手袋を着用中なの。これがまた便利なのよ!! で、これがバイト先に着いて、本業までの仕事完了後に、そしてまたちょびっとのメールや電話をしつつ撮影した写真。
 その場でちょっと止まってなおしてみようかなとか思ってみたけども、まあ、しかたねぇよ。
 見た感じもう、専用の工具なきゃなおせそうもないし、雨だし、暗いし、もう時間間際だったし。
 とりあえず、シャフトにははまってくれそうだったし、先っちょにかぶせた状態で、途中競馬の騎手がごとくペダルをインサイド・キッキングしながらバイト先へ GO であられた。

 しかし、パンクでもなんでも、こういう乗り方すっからすぐ壊すんだろうなぁ~、俺様って……

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  • June 16, 2008 9:11 AM
  • 松田拓弥
  • [ 自転車 ]

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