そして同日、17:04 のことである。
“ · チャーチャーチャーチャーチャ……ぃィイぇ~~~~~~~~ ”
『嗚呼!浪漫飛行』に起こされた。
それは、一度目の目覚ましに設定してる着信音。んだども、それはもう 16分前に止めている。
少なくとも三回、無視しようとした。
「……ワイぃ?」
「あの、今日の朝に自転車のクランク部分の件でメールいただいてたのでお電話さしあげたのですが……」
「あ、ああ。はい……はい」
無論、まだ布団にくるまって両目をかたく閉じ、より暗いほうへと横向きの状態。
≪サイクル ネットワーク 楽天市場店≫の大場さんだった。
先日もげたペダルの件である。
大場さんは、いつもこれぐらいの時間だ。バイトだからちょうどいいっちゃ~いいんだけど、まだまだ二度目の目覚ましが鳴る時間でしかない。
7割寝てた。さっさと修理してまたおまえに馬乗りになってやるぜぇと心急いていた。やっと電話がきた。
「あの、今、お時間だいじょうぶですか?」
「はい」
< ──── でもやっぱ、うぜぇよな>
俺様の現行愛車3人目だけどメインの “ GIOS LIEBE ” のもげた左クランク部。おれはバスケ部。小学校から専門学校卒業まで。ずっと。ずっと。ずっとずっと。そう、ずっとだ。
朝、その修理法を写真の添付されたメールで “ ご指導お願いします ” とおうかがいを立ててたのだな。
んで、こういう文章じゃ大変伝わりにくい旨、メールじゃなく、わざわざお電話でご指導くれたわけだ。
「……あの、今お時間だいじょうぶですか?」
「はい」
<やっぱうぜぇ」
「だいじょうぶです。で、なにが専用の工具が必要なんですか?」
「ええ、そうですね……」
俺様の “ レフトクランクの修理大作戦 ” は、その翌日、忘れてたのを忘れて、それをあたかもたった今思いだしたかのようなフリをしてから、家の前、玄関先にて敢行された。
とりあえず、もげた左クランク部分の写真。
明らかに “ ドラクエの宝箱 ” 的な穴があったので、そこに鍵を突っ込んでまわしてみた。ペダル部分とは独立した別の動きをした。
“ これだ!! ” と思った。
と、それはクランクがはずれた道端での出来事。その事実を胸に秘め、この日の修理を迎えたわけだ。
さっそく、なにも考えずに、とりあえず調子こいて同じ方向にまわしまくった。
そしたら、予想外にその穴の内壁がやっこかったらしく、この有様。おまけに、家の鍵までねじれる始末。さらに言えば、なおりそうな兆候はまるでナッティング。
まわりにはチビッコたちがいる。卑語は当然使えない。おまけに俺様は、もう素敵な大人だ。
多少の冷静さを装って、ちゃんとうちの鍵が解くかどうかテスト。
一回目は失敗 ──── 小さな “ Fuck ” 。
二回目は、意表をついた動きを見せて、なんとか曲がった鍵の先っちょを鍵穴の内部で元に戻し、開錠に成功。
とりあえずひと安心した。戻る。
いま一度、もげたクランク部を眺めてみる。
なんとなくエロティックなそれを見つめながら、大場さんの言葉を思いだしてみた。
半分以上寝てたわけで、話のほとんどがうろ覚えなんだけども、そこだけは意識を無理っくり覚醒させてがんばって聞いたところ。
キーワードは逃さない。
っつーか、俺様の頭のなかで、もっとも疑問符が沸いてきたところでもあるわけ。
なんたって、一回見てるからな。
<──── キャップ。ここにキャップ。金属、または、プラスティック……>
- 大場さん
- 写真を見る限り、クランク部のなかにあるナットはあると思うので、それを締めるだけでだいじょうぶだと思います。
- 俺様
- ああ、はい。それを締めるだけでいいんですか?
- 大場さん
- ええ。がっちりと締めてください。
- 俺様
- はい。それはどこにあるんですか?
- 大場さん
- はずれたクランクと自転車とがつながっている部分に、たぶんキャップでふさがれてると思うんですが、それをはずした中にあります。
- 俺様
- ……キャップですか?
- 大場さん
- ええ。プラスチックか、金属か、たぶんなにかキャップのような感じでふさがれてると思うんですが……
……なくね?
なくねぇか?
どう見たって、キャップなんてなくねぇか?
試しに、二人目の愛妻マツダ 『 MUJI 』 クロモリ のそこを見てみた。
「 ──── ねぇじゃん」
っつーか、クロモリ自転車のそれには、六角レンチの必要なもので固定されてた。
まさかそこまではねぇ~とか半分以上は期待だったけども、やっぱり『 MUJI 』さんとこの自転車は、なぜだかどれもが独自仕様になってるらしい。スタンドもブレーキもそう。
パンク修理で自転車屋さんに持ってったとき、サドルの交換するとなったら、“ 丸ごと換えなきゃなんないよ ” とか言われた。
でも、『無印』さんの自転車は、デザインがいい上に、それでいて安いからやめられねぇ。
Back to the GIOS. 反対側。
これが “ ドラクエの宝箱的な鍵穴 ” 的、穴。
ここに家の鍵を突っ込んでまわしたら、最初の写真のような手に負えない状態になってしもたわけだ。
でも、入れたくなっちゃわない? 入れたくない? 入れたいよね? 入れてみたくなっちゃうよね?
なにかが開きそうな気がするでしょ?
とりあえず、キャップなんてねぇ。すっげぇ柔らかいけど、明らかに金属っぽいし、プラスチックなんかであるはずもない。見た目。
だから今度は角度を変えてみた。
真上から右側のクランク付近を覗く。
……ん?
ただの整備不良か、金属どうしの誤差かと思った。プラモ作るとき、いったんもめんからはずしても、くっついてた部分のチョメッとしたのが残る現象。
「……なんか浮いてね?」
かすかにキャップの縁がフレームから浮いてるのが見てとれる。
有言実行である。思い立ったが吉日。
即行動。
マイナスドライバーでそこをつっついてみた。
とれねぇ。
ガッペガペほじっても、はずれやしねぇの。
なので、クランクの内側から押っつけてみた。
ドドンパ ──────── !!!!
──── とれた。
簡単にとれやがった。実にいとも。
しかも、その内側には、ムダにネジの構造が施されてた。
しかしながら、思いっきり押っつけたもんだから、予定外のものまでぶっ飛んだらしい。
それがこれら。
クランクと、キャップと、その “ 予定外 ” 。
どう見ても、それが大場さんの言ってた “ 中にあるやつ ” っぽいので、メカ嫌いな俺様の脳ミソをフル稼働さしてみた。
しかし、そこはさすが機械工の息子である。
ものの10秒で ──── 向き、方向、場所 ──── すべてが合致。
あとは、それを締めるだけでだいじょうぶとのことだった。
<おっ、やっとここでか>
- 俺様
- それにはなにか専用の工具とかって必要なんですか?
- 大場さん
- まあ、専用というわけではないですけど、14mm のボックスレンチが必要になりますね。
修理日前日、その日帰ってきてからすぐやろうという予定だった。
当然、車マニアなウメくんなら、それぐらいの工具は常に持ち合わせてる。持ってないはずがない。むしろ、“ どれがいい? ” ぐらいの勢いで、何種類も差しのべてくれるかもしれなかった。
しかしながら、うちの人が帰宅するのは、俺様がちょうど寝ようかなと就寝前の読書タイムぐらいが常。
さっさとやりたい。こんなことは早く終わらせてしまいたい。
俺様は、そういう男の子チックなことに胸躍る男の子ではないのです。そういうことはだれかできる人に任せて、自分は部屋で ZIMA を飲みながら映画を観てたい側の人間なのです。
だから俺様は、ちょっと早く起きたついでに、バイト前≪ダイソー≫に寄って購入済みにしておいたわけだ。
ここでヨルダン。
このボックスレンチ、購入場所の≪ルーシー≫に着く前、いつもそのへんを通るたび、ムダに目につく “ 四駆 & 二駆 ” という添え書きの≪ナントカナントカ≫っていうお店に寄って訊いてみた。
そういった類いの専門的な工具を扱うお店らしい。すっげぇ地味。なかも地味。マニア向けってのがムンムンしてる。
なにも見ず、まっさきに専門の人のいるレジのところで訊いてみると、これまたまっさきに目的の品が並ぶ場所に連れてかれた。
- 専門の人
- ボックスレンチはこちらになりますが。
- 俺様
- はあ……
- 専門の人
- 用途はどういったことになりますか?
- 俺様
- 自転車。
- 専門の人
- はあ ──── サイズなどはございますか?
- 俺様
- 14インチ。
- 専門の人
- 14ですと、こちらになりますね。
- 俺様
- ボックスレンチって、これだけですか?
- 専門の人
- あ、種類でしたら、こちらにもいろいろございますが。
おんなじようなものがたくさんあって、見てるだけで頭が痛くなってきたために、退散。
明らかに高かった。
本体だけで、2000円以上してるのもあったっぽい。もしかしたらもっと高かったかもしれまいに。
“ STRAIGHT ” だかっていうロゴがついてた。
キモい。
100円ショップで525円とはいえ、なかなかの締まり具合。かなり乳筋ついた気がする。
そういえばこれ、小学生のときとか親父の手伝いしてるとき、使ったことあった。なかなかの頻度でいたるところに使ってたな。
幼心に “ 金庫のダイヤルみたい ” でわりと好きだった道具の一つだ。つけるときのカチッていう感触もいい。
この日使った工具は、たしか写真撮ったはずなのに、撮ってなかったらしい。
マイナスドライバー。ボックスレンチ。14mm のはめるやつ。ペンチ。
そして完成。
わりといい感じ。
キャップもしっかりつけてポン。
なにごとも、やればできるもんだな。
いやはや、日光を避けに避けて日陰でやってたもんだから、なんだか全体的に青い写真になってしまったな。
どうも冷たい感じがする。
まあ、それはそれで好きなわけだけども、これは SANYO の “ XACTI HD1A ” っていうちゃんとしたデジカメで、やっぱりケータイのカメラとの差は歴然。
恐るべしだ。
今後はちゃんと、デジカメで写真を撮るようにしようと思ふ。
- June 19, 2008 7:28 AM
- [ 自転車 ]