ゴリカテ “ ゲロ古 ” の列挙
ここにいきつくまでのサイト『 Dear 』シリーズとか『 Matsudiary 』とか、かなり遡る日記たち。分類すんのも面倒なので、ここに集約。
- 400yen -
で、さっき歯医者さんから無事帰宅。
とりあえず、寒かった。雪もちらつきはじめてた。
もうそろそろワラジムシ・ジャンパー着ないとダメかねぇ~……
ってなわけで、こんな季節の到来にも似た感じでじわりじわりと本日の経過を展開させていってみようと思ふのであった……
昨晩は、徹夜。
中途半端に寝ると11時の予約までに起きれないかと思ったわけだ。
しかしながら、9時ごろに『情報ツウ』を見ながらちょっとだけ寝てみようという試みに走った。さすがにもう顔がその不健康さを物語るまでに充分な変貌を遂げていたのに気づいてしまったわけだ。
そんな顔じゃ、あの歯医者さんには行けない。
で、案の定、目が覚めたのは10時34分だった。
一応急ぎながらも、身支度を整えた。《恵佑会》へ行くときにはたいがい部屋着のままなんだけども、《ルーシー》さんへは、ちゃんとよそ行きのズボンを履いている。そのへんがもうすでに両歯医者さんへの意識の違いをはっきりさせている。
それでも家を出たのは10時49分だった。
そして到着は11時13分。
そういえば、《ルーシー歯科医院》さんへは、自分が交わしたはずの予約の時間にちゃんと行ったことがない。それに比べて《恵佑会》へは、多少時間より早く着く。
やっぱ話せると感じる人がいると、人間の意識ってやつは簡単に緩んでしまうもんなんだなと感じる。
完全に甘えだ。それ以外のなにものでもない。
笑って許してくれる人がいるっていうだけで、いともたやすくそこに甘んじるようになる。やがてはそれがあたり前とも感じるようになってしまうことでしょう。
昔、母が言った。
「許してくれる人がいるのなら、それはもうわがままじゃないんだよ」
……たしかに。
でもやっぱり、その時点でもうすでにそれこそが甘えであり、わがままなんだろうなと思う。
わがままはわがままで、甘えは甘えでしかない。
それはきっと、ほかの人が決めることじゃない。自分のなかにあって、自分のなかで、それをどう感じて、どう受け止めるかでしかない意識なんだと思うわけだ。
いや、このへんはもうたぶん、感覚的なものなんだろうさね。
で、それを許してくれたり受け入れてくれたりする人が現れてしまうと、そう感じる感覚が麻痺してしまって、そこにすがってもいいもんなんだと錯覚するようになるんだろう。
たぶんそれは、年をとればとるほどそうなってくんじゃないか。
甘えるのがヘタくそになってくとも言うけれど、それってきっと甘えるっていう感覚が鈍感になってきてるだけなんだと思う。甘えられないんじゃなく、それが甘えてるっていうことなのかの判断ができなくなってるだけのこと。
だれかが言った。
“然るべきときにきちんと叱れる人が、本当の大人”なんだと。
さて、歯医者だ。
遅刻は遅刻だ。
僕は名前が呼ばれるまでのあいだ、『君に読む物語』というニコラス・スパークスさんの小説を読んでいた。
呼ばれると、今日はなぜだかいつもとは違って、奥の奥の個室に案内された。
“いつもと違う”っていう状況だと、なぜこうも進んでく廊下が薄暗く感じるようになって、その一歩一歩がビビリンピック短距離走のタイムを縮めていくのか。
かぁ~なりビビッた。いや、ビビッていったというべきか。
まあ、ただ単にほかの個室があいてなかったってだけのことっぽかったけども……このへんがもういかにビビッてたかっていうこったな。どんだけビビッてんだよ、俺様は。
いやぁ~、やっぱ“予想がつかない”っていうのが俺様は一番嫌いだ。不安や恐怖にあおられる。
だいたいでも想像がつけば、それを我慢すればいいだけの話で、どれだけ我慢すればいいかもわかるんで、特に問題はないんだな。わかるってのは強いな。
かといって無知ってのも、それと同等か、あるいはそれ以上に強いと思うけど。
まあ、また例によって例のごとく、担当の人が来るまでのあいだ、案内してくれた人とは別の看護婦さんといいだけ話してた。この人はなんかもう、俺様の担当看護婦さんみたいな気がする。いつもそう。最初からそう。そして、話せる人だ。
嬉しい限りだ。
案内してくれた看護婦さんは、担当の歯医者さんが来るまでにまだちょっとかかるということで雑誌を持ってきてくれた。でも僕がそれを丁重に断ると、それ以来来てくれなくなった。思わぬ失態だった。
でまあ、しばらく経って歯医者さんがやってきた。
「こんにちわぁ」
「あ、どうも。こんにちわ」
「で、どうでした? だいじょうぶでした?」
「いえ。帰ってから痛かったです」
「あ、ホントですか?」
んな、そんなこと嘘ついてどうすんだよ。アホか、おまえは。
「あ、ちょっとチクチクするような痛みですか?」
「いえ。そりゃもうバッコシです」
「あ、ホントですか?」
いや、だからな? そんなことで嘘ついてどうすんだっつんだよ。ドアホか、おまえは。
「ええ」
「それで今は。もうだいじょうぶですか?」
「はい。今はもうだいじょうぶです。あ、それであの!!」
挙手。
「あのですね??」
「はい。どうしました?」
「まだ親知らずのところが原因不明に痛むんですけどもね?? これってなんかなってんじゃないのです?? だいじょぶなんでしょうかね」
「あ、チクチクするような痛みですか?」
「いえ。ズキーンときます」
「あ、それはなにもしてなくてもですか?」
「いや、なにもしてなければだいじょうぶなんですよ」
「じゃあ、なにか噛んだりしたときとかですか?」
「いや、それもだいじょぶなんですよ」
「あ、今ってこっち側使ってます? どんなもの食べてます?」
「ああ、最近はもっぱら流動食ばっかりです」
「ですよねぇ~……どんなときに痛みます?」
「いやぁ~、それが原因不明なんですよ。なんかある特定の状況になったときなのかなと……」
「体温上がったときとか」
「ああ、けっこう、それそうかも。あと寒いとか乾燥とかも関係あるんですかね」
「温度差があると痛んだりですか?」
「ああ、あるかも」
「腫れてるとかっていう感じはありますか?」
「う~ん、どうだろう……いや、でも、それはだいじょぶかと思われますが」
「じゃまあ、ちょっと看てみますね? じゃ、椅子倒しますねぇ~」
ウィ~ンと椅子が倒れていく。
「はい、よろしくお願いいたします」
ちっちゃい鏡を口のなかに突っ込んで歯医者さんが覗きこむ。
「……あぁ~、穴はまだあいてますけど、でもなかのほうはもう肉でちゃんと埋まってきてますから、だいじょうぶですよ」
「そうですか。ならいいんですよ。どうもです」
必ずここに来ると、親知らずの経過見てもらってんなぁ~。
で、今日は前回やってもらった神経のつづきで、根の治療なんだそうだ。
その治療の説明を受ける。
まずはそこにかぶせてあったフタをはずす。チュイ~~~ンってやつで削った。
最初はずっと看護婦さんがウロチョロしてたから、そのへんのことは彼女にやってもらえるもんだと思ってたけど、それはどうやら甘かったらしい。治療とはいえ甘いひとときを期待するのはまだまだ早いようだ。
口をゆすいだあと、歯医者さんは小さい鏡の柄のほうで、その箇所をカンカンと何度かたたいた。
「これ、痛いですか?」
「………」
「ちょっと響くとは思いますけど、痛いです?」
「いや……だいじょぶです」
「じゃ、根の治療のほうしますね」
始まる。
なにやら看護婦さんと専門用語での早口なやりとりがあった。そのあとで、なんか黒い器具が出てきて、片方を僕の下唇と歯ぐきのあいだに引っかけられた。
空恐ろしい。なにされんだと、その器具を用意してる段階から首を伸ばしてその光景を覗いていた。
で、もう一方の先端を、神経を抜いた穴に突っ込んだ。さらには、それをグリグリとしてきやがった。
「これ痛いですか?」
「……う、うん。まあ、だいじょうぶだと思います」
それから何度か同じことを訊かれるたびに、その器具を穴から突っ込むときとは逆にまわしながら抜いた。
それの繰り返し……が、しかぁ~し!!
「これはだいじょうぶですか?」
「……あ、痛いです」
「そうですか……」
それでもやめない。
そしてついにきた。
「あ、あ、あの、ちょちょちょ、ちょっと……」
「はい?」
歯医者さんはその器具を口から出した。
「あ、痛かったですか?」
「はい」
「それじゃあ……」
「あ、ちょちょ、ちょっと待ってください」
まだすぐ続けようとしたので、僕はもう手を上げてそれを制した。そうやって耐えるのがやっとだった。いよいよ目をつぶった。
「だいじょうぶですか?」
全身から汗が噴き出していた。なにも答えられなかった。手を上げたままだった。
「ちょっと、待ってください」
すると歯医者さんは、看護婦さんとまた専門用語でのやりとりをはじめた。数字も出てきて、その器具の先端についてるやつの交換ではないかぐらいしかわからなかった。
痛みはいっこうにおさまる気配がない。
頭のなかで痛みが痛みの形となってグルグル尾を引いてまわってるような感覚だった。色は黄土色だった。
「だいじょうぶですか?」
「……あ、ああ、なんとかちょっとおさまったみたいです」
「そんなに痛かったですか?」
「ええ、そりゃもう……あんときはもう帰ろうかと思いました」
その僕の答えに、歯医者さんも看護婦さんも笑っていた。
本当に暴れそうなぐらいの痛みだった。どうせなら失神したかった。
「なんか引っ張られるような痛みですか?」
「いえいえ、もうズキーンですよ」
とまあ、その後は、それでもそれなりに痛かったときもあったけども、あの痛みが最高到達点だった。
「いや、あれはこれで根までの深さを計ってたんですよ。そこに薬を入れるために、根のところを少し広げるっていう処置なんです。まあ、そこの神経はもう取ったんでないんですけど、根のまわりにはちゃんと神経があるんで、たぶんそれにちょっと触れたときに痛んだと思うんです」
「はあ……」
それでまあ、消毒してまたフタをして処置は無事終了したようだった。
というか、なんか見てると、処置の途中でやめたっぽい気がしたんだが……
「それじゃあ経過を見て、次回は中の状態がよければ、そこに薬入れますね」
「経過を見て、ですか……」
「ええ、そうですね」
「わかりました」
「それじゃあ今日はもう、口ゆすいでくださぁい」
「はい……」
僕は椅子の力に任せっきりで、自分から起きようとはしなかった。そんな気力はなくなっていた。まだあの痛みの余韻にやられてた。やっとぬるま湯のたまっている紙コップを手にしても、すぐにはそれを口に運べなかった。
「だいじょうぶですか?」
口をゆすいでる最中に、看護婦さんが気遣ってくれた。
ぬるま湯を吐き出してから、僕は答えた。
「いやぁ~、全身から汗が噴き出したのなんてもう、ホントひさしぶりの経験でしたよ」
看護婦さんは笑った。なんか大人びた笑い声だった。
「で、あの。今日って、進展はあったんでしょうか??」
「進展ですか?」
「はい」
「ええ。とりあえず経過を見てっていうことですね。じゃないとわからないので」
「はい。そうですね」
それから身支度を整えて、そこを出るまでのあいだ、担当みたいなその看護婦さんと話してた。
「お大事にぃ~」
「あ、はぃ~。どうもぉ~」
僕は一人、ぶつぶつとひとり言をつぶやきながら、待合室に出るまでの細く薄暗い渡り廊下を歩いていった。
「……いやぁ~、痛かったわぁ~。マジで……マジっすか、これ……」
また待合室のソファに腰を下ろすなり、すぐにうなだれた。
今日の受付の女の人は、前回来たときとは別の人だった。前も最初はいたんだけど、途中から別の人と交代したらしかった。
今日の人は、すこぶる可愛い感じの人だ。たぶんどっかのモデルとか言われたら、“へぇ~、そうなんだぁ~”って中途半端に納得すると思われる。
名前が呼ばれた。
「はい、はい、はいはいぃ~」
受付に行った。
「え~っと、じゃあ今日は400円ですね」
「あ、はい……え?? 200円ですか??」
「え? 400円です」
「4ですか??」
「はい、400円です」
「あ、400円でいいんですか??」
「ええ、根の治療ですよね?」
「ええ」
「ですよね。根の治療のときってあんまりお金かからないんですよ」
「ほう!! あら、そうなんですか」
あ~ん、なかなかいい滑り出し……この人はちょっとほかの人よりとっつきにくいかなぁ~と思ってたんだけども、もしかしたら一番親しみやすい感じかと思われた。
「え~っと、じゃあ松田さん、次回の予約なんですけど」
「はい」
「来週の火曜日はいかがでしょう?」
「ああ、火曜日ですか?? う~ん……最短で」
「え? 最短ですか?」
受付の人は笑っていた。
どうやら“最短で”という言葉は、彼女が予定していた返答リストのなかには含まれていなかったんだろう。
「最短、最短……最短ですかぁ……」
受付の人は、ノートみたいなののページをめくりはじめた。
「……でも、根の治療ということですので、何日かはあけないといけないので。早くても月曜日か火曜日になっちゃいますかねぇ~」
「ああ、じゃあ最短で月曜か火曜ってことですよね」
「ええ、そうですねぇ~」
そう言ってこちらを見上げる彼女は、なんとつむらな瞳なんでしょう。
「でも月曜日だと、12時までなんでそのあとっていうことになっちゃうんですよぉ」
「え?? それって夜じゃないですよね??」
「あ、はい。午前中はもう予約でいっぱいなんで、午後からになっちゃうんですよ」
「あ、じゃあ、火曜日で」
「はい、じゃあ火曜日で。時間は……10時からなんで、11時ごろなんてどうでしょう?」
「あぁ~……最短で」
またなにげにクスッと笑った受付の女の子。
「はい。じゃあ10時で」
「はい。よろしくお願いいたします」
「では来週の火曜日の10時ということで」
「あ、はい、どうもです」
とまあ、診察券と保険証を受け取ってはみたものの、すぐ隣の棚に並んでいるものを眺めていた。
「あ、あの」
「はい?」
と、受付の彼女がなんとも突然勢いよく立ち上がった。ちと驚かせたか??
「あ、あのですね?? この歯垢染色なんとか剤とかいうやつって、どうなんですかね」
「どうというと……」
「いや、いっつもテレビで見てて、いつか自分も使ってみたいと思っててですね??」
あの磨き残した歯垢が赤く染まるっていう、あれだ。
「ええ、これがジェルタイプのやつで、こっちが錠剤のタイプで、であとこっちが液状のタイプなんで、いろいろ種類あるんですよ」
「ええ、ええ、そうなんですね。でもこれって、ホントにあんな感じで赤く染まるもんなんですかねぇ?? 効果ってあるんでしょうか??」
それからしばらくのあいだ受付の女の子に説明をしてもらっていた。何人かの患者さんが来たんだけども、ちょっと気にしただけで構わず話しつづけておった。
ホント、一番話せる人かもしれまいに……
「……まあでも、毎日じゃなくても時間あるときに使ってみると磨き残しとかけっこうわかるんで、効果はあると思いますよ?」
で、結局、ジェルタイプのを1つ買ってみた。とりあえず、これを使うと2時間ぐらいずっと口のなかがピンク色に染まったままになるらしいので、ホント時間のあるときに使ってみようと思ふ。
あと親知らずとか神経のこともあるんで、うがい薬みたいな口腔内消毒液ってやつとかもあったりして、もうちょっと話してようかとも思ったけど、それはさすがにやめた。
帰り際、受付の女の子がちょっと背後の壁を振り返った。治療から待合室に戻ってきたときには、もうすでに誰もいなかった。
「あ、そういえばもうお昼休みの時間ですか??」
「え?」
驚いていた。
「あ、ええ、はい。そうですね」
「そうですか。お疲れさまです」
僕はそう頭を下げた。
「お大事にぃ~」
「あ、はいぃ~。どうもでぇ~す」
気分も上々で僕は歯医者さんの自動ドアをくぐった。
“食べるにぼし”を買って帰ってきた。
- December 1, 2005 3:52 PM
- [ ゲロ古 ]
- nervi -
そして今日は、神経を抜いてもらった……
左側の上、奥歯の一本手前の歯の神経をやってもらった。
ここへきて、いよいよ麻酔がきかない体なんだという説に信憑性が付帯したようだ。
本当に、効かない。効果なし。
今日なんぞは、3本も打ってもらった。
1回目はまったく効かず。
「麻酔効きはじめるまでちょっと時間かかりますから」
そう言われて、ちょっと以上放置された。
まあその間、歯科衛生士さんかなんか知らんけど、超美白で可愛らしげな女の人とフレンドリーにしゃべれたわけだから、言って来いでチャラとしよう。
「もう逃げ出したいぐらいですか?」
「ええ、もうとっとと帰りたいです」
美白さんは笑っていた。
「あのですね」
「ええ」
「麻酔が効かない体らしいんですけど、そのへんはだいじょうぶなんでしょうか??」
「あ、そうなんですか? 今、どんな感じですか?」
「ああ、今ですか?? え~っと……なんか、歯が抜けそうな感じです」
また美白さんが笑った。
とはいえ、僕がそちらを向くと、すぐに目を背けて、一度たりとも視線が合わなかったのは言うまでもない……
でもいいねぇ~……いいですねぇ~、やっぱり女性の笑顔は……なぜか不思議と浅くとも安心感が芽生えてくる。言うなれば、晩夏のたんぽぽの上で無音の夜空を眺めてる感じだ。
しかし、最初のキュイーンで早速痛い……ズキーンだよ。
歯医者さんも思いっきし覗きこんでるから、左手の人差し指がピンコ立ちでも気づかない気づかない。
「……あ、あの??」
「あ、痛かった??」
「ええ、バッコシきてます」
「ああ、ホントに効かないんだねぇ~」
「ええ、とっても」
始まる前、歯科衛生士さんと話してるあいだにそのことを言ってみた。そしたらちょうど担当の歯医者さんが来たんで言ってくれたらしい。
すると、“下の歯の場合、そやってまったく効かないっていう人もいるけどね”とのことだった。
しかし俺様は、以前も上の歯だったのだよ……しかも、その手前の歯。ほぼ同じ箇所である。
するとどうでしょう。
「え? ホントに?」
お医者さんもビックリです。そう、ビックリなんです。
ええ、ホントに麻酔が効かないらしいのです。
しかしながらこの歯医者さんは話せる方で、あっさりとこの俺様のすべてを受け入れてくれた。
「いや、だいじょうぶですよ。効くまで打ちますから」
「よろしくお願いいたします」
最初の1本目のときからそうだったんだけども、歯科衛生士さんが両脇を固めてくれて……
手でもにぎっててくれるんならまだしも、ただじっと見下ろしてくれるわけよ。
すっごいイヤ。
「ごめんねぇ~。じゃ、ちょっとだけチクっとするからね」
ホントにチクっとした。麻酔打ってんのに。
「あ、痛かった?」
1本目のときなんぞ、正直に答えたもんさ。
「ええ。ホンット、ダメなんですよ……」
だから歯医者って嫌いなんだよ。
でもまあ、だからこそもう恥も外聞もお構いなしで、ここぞとばかりに自分の弱い部分さらすんですが……
うがいするたびにため息をつき、なにかするたびに“痛いですか??”と確認して、“虫歯”と言われるたびに、どこか遠くへと視線が飛んでくんです。
しかし、なにが一番イヤって、かわいい女の人たちに自分の口のなかを覗きこまれるっていう、それ。
口のなかなんざ、それが生き甲斐ってなぐらいに手入れでもしてなきゃ、そんなきれいなもんでもないだろうし、実際そんなチャームポイントなんて言えた場所でもないし。
歯磨きはたぶん人一倍してるだろうし、ナイトケアも毎晩してるけども、汚いというか良くないから歯医者さんに行ってるわけでさ……
歯医者さんと女性患者さんってのはよく聞くけども、歯科衛生士さんとその男性患者ってのは、まず可能性的にゼロと等しいんじゃないかと思われるわけだ。
根性ない上に、そんな口のなかばさらしてるわけでさぁ~ね。
いくらかわいい人がいようとも、とりあえずは目の保養とかひとときの安らぎぐらいなもんで、恋人候補だとか恋愛対象だなんて見れない人たちなんだろうさ。
しかしねぇ~……
歯医者さんなんて、かわいい看護婦さんとかでもいない限り、通おうとか思えないとこだもんなぁ~。
そういうのが人一倍強い動機の持ち主なんで、余計にそうさ。
まあいいさ。
3本打ってもらってやっと感覚がなくなったころ、僕の歯も大部分が消えていた……
歯の喪失って、ホント喪失感デカいな。
そこにあいた穴に突っ込んだベロと一緒に吸い込まれてくかのようだ。その深い深い闇のなかに。
で、治療も終了。
待合室のソファに腰を下ろした途端、もうそこでぐったりだよ。ほかにも何人かの人が待ってたのもお構いなし。
ちょっと経って名前が呼ばれて受付に行った。
「だいじょうぶですか?」
すかさず受付のお姉さんが気遣ってくれた。
「気分悪いですか?」
「あ、ええ、まあ……ショックなんです」
受付のお姉さんが笑った。
で、お金を払う。
「それで次回なんですが……」
「最短で」
「あ、最短ですか……でも今回のお薬の経過なんかもありますんで、最低3日ぐらいはあけないといけないので、木曜日とか金曜日はだいじょうぶですか?」
「はい」
「どちらにしますか?」
「最短で」
「では木曜日の11時からでだいじょうぶですか?」
「ええ、バッチリです」
そうと決まった。
歯ブラシも買った。
ここでは“ソニッケア エリート”っていう超音波歯ブラシも売られてるんだけども、それは高い。
前々から夜の通販番組で見てて、メッチャ良さそうな感じだし欲しいと思ってはいるんだけども、高くて買えない。
たしかイチローとかなんとか会館の館長さんも愛用してるとのこと。
歯は大事だな。
嗚呼、女性の笑顔に囲まれるってのは、こんなにも幸せな気分にさせてくれるんだなぁ~……
嗚呼、こんな日々に感謝です!!
≪ルーシー歯科医院≫万歳!!
今後ともお世話になります。よろしくお願いいたします。
かわいい人がたくさんです。
不純かつ不届きな男性諸君にオススメです。もうここ以外行きたくないです。
しかし、なんだこの痛みは……親知らずより痛ぇ~よ。
帰り際に歯医者さんが“痛み止めはあります?”って確認した真意がやっとわかった。身をもってわかった。知らしめられた。
おかげで今日の夜ご飯は、はちみつを溶かした牛乳です。“ハニーミルク”だ……なんとなくヤラシくも美しい。
で、うまい!!
しかしこんな流動食ばっかだなぁ~、最近……スプーンいらずのヨーグルトとか。
ま、世の中には水にはちみつ溶かしこんだやつだけで生きてる人もいるってなわけだし、俺様も死にゃ~しないだろう。
とかなんとか言ってはみても、痛ぇ~もんは痛ぇ~。普通にご飯も食べたいさ。
でも感謝だ。
なにごとも感謝の気持ちだ。
その気持ちを忘れずに……
- November 28, 2005 5:40 PM
- [ ゲロ古 ]
- Manami Konishi -
ふと目が覚めてベッドのなかで上体を起こして振り返ると、そこには小西真奈美さんが……
ドアとベッドのわずかな隙間にちょこんと座って、壁のどこかの一点でその視線が止まっていた。
この季節にふさわしい茶色とベージュと、かぼちゃ色の布をつぎはぎしたような可愛らしいコートを羽織り、それと似たような色使いでいく重にも巻かれたマフラーのなかで下唇のわずかが隠れていた。
「おいで」
僕は、それがごくごくあたり前であるかのように、真奈美さんを呼んだ。
彼女もそれが自然で、すごく嬉しそうに微笑んだ。
すっと静かに立ち上がると、僕が差しだした手と真奈美さんの伸ばした手が、どちらからともなくそれをつないだ。
ずっとベッドで寝ていた僕とは違って、かすかに鼻の頭を赤くする彼女の指先が、僕の掌のなかを滑るようにぬくもりを伝えた。
ぬくもりは、あたたかさばかりじゃない。僕だけじゃ感じれないもの。一人じゃないということ。
僕がつないでいる手で真奈美さんを引き寄せる。
たった2、3歩で届く距離。それでいてもっとも遠く感じる距離。
もう一方の手で開いた布団の隙間が寒くなった。
でも、その隙間を真奈美さんが埋めた。熱いぐらいの布団のなかで、真奈美さんのコートだけがひんやりとした。
すべて着たままだったから、滑るようには入れなくて、胸から上がまだ布団の外に出ていた。
真奈美さんがふと視線をはずしてつぶやいた。
「わたし、ずっと好きだったんだよ?」
僕は抱きしめた。そして、抱き寄せた。
「そんなの、おれだってずっと大好きだったんだよ?? 知らなかった??」
「えぇ~、ホントぉ~!?」
とすぐに、真奈美さんの体が全部、僕の腕のなかにおさまった。
向き合って、また抱き寄せた。
小西真奈美さんの顔が、目の前にあった。鼻の先が触れ合いそうなほど、見つめ合う目と目の焦点も合わないほどに。
やわらかな静寂のなかで、真奈美さんがもう一度確かめるようにつぶやいた。
「あぁ~、本物だぁ~……」
芸能人さんから“本物”と言われる一般庶民。
そんなの、こちらこそだ。
「……うん、ホントに本物なんだね」
そのまま僕らは目を閉じた。
キスをした。
なんと柔らかい唇なんでしょう。まるで雪のようにきらきらと輝いていた唇が、今はゆったりと流れる水面のようだった。
雰囲気と本能と成り行きにまぎれて、僕は真奈美さんの乳に触れていた。乳首に僕の指先がつまづいた。
テレビで見たように、真奈美さんの胸はそんなに大きくはなかった。でも、すごく心地よかった。
なんでだろう……あたたかさを感じた。
そしてやがてお互いの唇が、まるで氷解のような静けさと時の流れのなかで離れた。
ふとまぶたを上げると、真奈美さんが微笑んでいた。
もう一度、彼女に口づけをした。
目を開けると、また微笑んでいた。
僕がしばらくその笑みを眺めていると、真奈美さんは、突然なにかを思い出したように言った。
「あ、そういえば、わたしが住んでるところ、川下だって知ってた?」
は?? 川下??
「マジで!? それは知りませんでした。メッチャ近いじゃん。ってか近すぎ」
「でしょ~?」
「で、どのへんよ。≪カルビ大将≫とかなんか車屋さんとか、どっかあのへん??」
「ん~……ちょっと、違うかな」
そう言って、真奈美さんの住んでる場所を教えてくれた。
「またまたぁ~。んなわけないじゃん。それじゃあ近すぎだって」
「ううん。だってホントだもん」
「マジっすか」
「うん。大マジ」
笑った。
可愛い。可愛すぎる。一緒にいて安らぎすぎる。首を横に振るときも、首を縦に振るときも、背伸びしてるのにできていない少女のような愛らしさだよ。ダメだ、こりゃ……
そして、なんとなく訪れた沈黙。
僕の我慢も限界だった。
オぉ~トコならぁ~……
「あのさ」
「?」
「おれとね??」
「うん」
「……付き合ってください」
語末だけが強気であり弱気だった。
しばらく見つめられた。そのあとキスされた。
ドラマならここで、その主題歌のサビがドカーンと入るところだろうさ。個人的には、Oneの『たった一つの約束』あたりがいいかなと……
僕は彼女の開いていないまぶたを見て、自分も閉じた。
ああ、なんと衝撃的。そして衝動的。
今思えば、それが答えだったんだと思う。
いや違う。
やがて僕が目を開けたとき、彼女が微笑んでくれていたことだ。そして、変わらずそこに彼女がいたこと。
そう、今まではただ眺めているしかできなかったあの笑顔で……
それできっと安心したんだろう。僕はそのままいつの間にか眠ってしまっていた。
僕は、彼女を抱きしめたままの格好で目を覚ましたんだから。
……いやぁ~、なんとリアルな夢を見たんでしょう。
超超リアル、超リアル。心の底から、So real.
実感もありました。感触はまだあります。奥行きも空気感も、影もぬくもりもありました。
でもただ、ただ、“におい”がなかった。
認識、識別、理解、回想、照合などなど、認知するために最重要と言ってもいいぐらいの“におい”を感じることができなかった。
その人をその人と、もっとも感じることができる要素……“におい”。
それが……それを感じられなかった。
ほかのすべては、だいたい情報として頭のなかにあるからなんだろうな、きっと。
姿も声もある。乳首とか乳は、たぶん今までの記憶のなかで補ったんだろう。テレビで見た小西さんのそれに近いものを記憶である程度作り上げて、さらに自分のイメージで微調整するわけだ。
あとはもう、いつもの自分の部屋だし、頭のなかで計算して影とか照度とかはたたき出したんだろう。
まあ、ここんとこずっと『HOTMAN』っていうドラマの再放送がかかってて、ほぼ毎日欠かさず観てたからなぁ~……その影響もあんのかな。
それにしても俺様の好きな顔の感じの偏りったらないな。
やっぱ“好きなタイプ”ってあんだな。まあ、厳密に言えば“好きな顔のタイプ”なんだろうけども。
なんか昔っからそうなんだけど、いや、きっとほとんどの男性諸氏もそうだと思うんだが、ふと夢に出てきた女の人のことを好きになってしまう。
変に意識しちゃうんだな。
で、これがHな夢ならなおさらだ。
ポッと現れて、スーッといつの間にか消えていく感じ。
これがたぶん、男の恋心を一番くすぐる女性の存在感なんじゃないかと思ふ。
しかも、最初にドカンと強烈なインパクトというか、“合い”感を男に残してたら、きみに惚れること間違いなし。それでなおかつ、気のある素振りでも交えてようものなら、ずっと忘れられない。気になってしょうがない。
絶対、きみに惚れちゃいます!!
これは断言できると思う。
極端なこと言えば、美人の幽霊さんなら一目惚れって感じか。
フェイドアウトってのがミソだな。
……まったく、不思議なもんだ。
夢を見る人は、その夢が具体的であればあるほど淋しいとは言ったもんだけど、やっぱいい夢見た日は気分がいいなぁ~。
でも、そんな時間の流れが現実になる日はいつになることやら……
目覚めても夢のようなぬくもりを探し求めてしまう愛。
夢はぬくもり。
ぬくもりは目覚めさえ阻もうとするもの。
そんな夢追い人は今日も寝不足……
俺様ったら、根っからのドリーマーらしい。
小西真奈美さん、あなたのその笑顔は、人を幸せなぬくもりのなかへと案内しています。
ありがとう。
- November 24, 2005 4:44 AM
- [ ゲロ古 ]
- Sheena -
受付は、8時半。
ジャストに到着。
受付を済ませてすぐ口腔外科へ。
呼ばれた。よく見れば“アポなし”ってしっかり書いてあった。第一声も「予約の日じゃないですよね??」だった。
とりあえず、ごまかしごまかし説明して、着席待機。
ちょっと経って僕の番号が呼ばれた。
ふと顔を上げると、そこには、すらりときれいな脚を、これまたすらりと伸ばしてたたずむ中浜千恵美さんが……挙手っす。
千恵美さんがこちらへ歩み寄ってきた。そのあいだにはウォ~クメンのイヤホンを手早くはずし、リュックのなかへしまう。
こういうときってのは、自分でも驚きの機敏さを発揮する。
呼ばれたら立ち上がるのは普通というか、ほとんど条件反射とでも言えよう反応なのに、ここの病院では、それを「座ったままでけっこうですよ」と、かるく注意ぐらいな口調で制される。
千恵美さん、音もなく到着。
一瞬、表情が変化した。
そういうのを僕は見逃さない。
“あ、この人憶えてる”なのか、“予約の日じゃないのに、なに来てんのよ”なのか、“寝グセぐらいなおしてこいよ”なのか、“ズブ濡れじゃん”なのか、どこにその感情がかかっているのか僕にはわからなかった。
女の人が、座ってる男の足のつま先から頭のてっぺんまで視線を馳せるっていう行為には、どんな意味があるのか……
たぶん全部だな。すべてにおいてあてはまるもんな。
ってか、あてはまるものしか書いてないしな。
まあ、否定的な人、あるいは人の夢を壊したがる人は、“そんな意識してないよ”っていうんだろうなぁ~。でもって、なんか言えば“それが現実だし、実際そうだと思うよ”とでも言い返されるんだろうさ。
ああ、暗いな、おれ。
性格が歪んでる……千恵美さんの態度にも表れてるしな。
「今日はどうされました??」
お決まりさ。事務的さ。お仕事さ。
ああ、いいさ。
しかし、さっきの人とは、ちょっとニュアンスを変えて説明。受付の人は、ミジンコも笑わない。笑う気配すらない。
きっとあの人の表情が弛緩するときってのは、おじいちゃん、おばあちゃんの応対をするときぐらいなもんだろうさ。
ホンット、笑わない。
しかし、千恵美さんは、笑顔を知ってる。忘れてない。いや、忘れる人じゃない。だって、女の人だもの。そのへんの事情もわかってる人なんだろうなぁ~と、僕の肌が感じる。
話を聞いてみると、今日はあの“やくさん崩れ”が来てないらしい。休みなんだそうな。
「今日は別の先生になってしまうかもしれませんが、よろしいですか?」
「ええ、全然構いません」
即答でした。
そしてそれと同様と呼べるぐらいの素早さで、千恵美さんも去っていった。
一応、仕事上の言葉と微笑みは置いていってくれたけども、なんとなくそのうしろ姿が、向こうの窓の外でさらさらと降りつづく雪に重なった。
しかし、ただじゃ転ばない俺様だ。
収穫1……高橋さん。
診察室へ呼ばれる。
見たことのない人に導かれるまま、一番奥の、さらに隅の診察台に案内された。
しかし、気になることが1つ……“やくさん崩れ”がいた。千恵美さんたちと話してた。
なんだ、いるんじゃねぇ~かよ、あの野郎……
で、さらにここでちょっと予想外。初診のときみたいに、説明だけして終わるかと思ってたのです。
しかし、診察するという。
とりあえず荷物をカゴに入れるよう言われたので、それに従う。
スキーウェア、手袋、リュック、マフラーと、とにかく荷物の多い男だ。
看護婦さんがなにやらパソコンをいじってるのを尻目に、俺様は診察台に寝っ転がる。
待ってるように言われ、看護婦さんが消える。
どうにもこうにもパソコンの画面が気になって仕方ない。もう完全に染まってしまってるのか、パソコンがついてるのを見ると、とりあえず見たくなる。
見てみると、まあ、俺様のカルテみたいな画面が開いてあった。
しっかりWindowsだった。ガセぇな。フォームがガセぇ。
あまりに来ないのでずっとパソコンのディスプレイを眺めてたんだけども、看護婦さんがこちらを覗きそうな気配を察するたびに、目の前の空気清浄機のランプを見なおした。
恐ろしく自然だった。
なんとも小難しい病名やらがリストアップされていた。
しかし、なんとも腑に落ちない点が1つ。
“病名候補”とか“病名検索”とかいうリストも一緒にあったこと。
しばらく経って、先生がやってきた。
やくさん崩れだった。
理由を説明した。
抜いたところとは別のところが腫れてるような気がしています。日を追うごとに腫れてきてる気がいたします。
「じゃあちょっと看るから、こっち向いて」
「はい」
「あ、顔、もうちょっとこっちに向けてくれる?」
「はい」
「ああ、だいじょぶだいじょぶ。全然腫れてないほうだよ」
そして気持ち乱暴に濡れた綿を抜き跡のところにおっつけやがった。
「っていうかむしろ、驚異的な回復してるよ?」
「ほう」
まあ、そういうことだったらしい。
しかし、やくさん崩れ、絶対寝てたな……いや、二日酔いだな。
治療が終わったあとで少し話したとき、ずっと目を見て話したらば、彼の右目が真っ赤に充血しておった。前に来たときより髪の毛のアブラ具合もほどよいぐらいでおさまってたし。焦って整えたって感じだった。あの腕の毛並みも洗いたてのものだった。
いやはや、お休みのところ申し訳なかったな。もしかしたら奥さんと徹夜でニャンニャンしてたのかもしれないしな。
ごめんな。
……と、メインはその話じゃないのだよ、今日は。
本日、いや、もう昨日か。
ウメちゃんと中華レストラン《バーミヤン》へ行ってまいった。
そこで……そこでだ。
予てより、かわいいキャワイイ可愛らしいと俺様が騒いでいた人の名前を、聞いた。
たぶん、『48』のときにも書いたであろう彼女のことである。
今日もまた同じ髪型だった。
基本的に、ヘアースタイルに変化のない人はダメなんだけども、彼女の場合は似合ってればOKということに甘んじておこう。
しかしこう、店員さんに突然なんの前触れもなく名前を聞くと、たいがい断られるかはぐらかされる。“なんでですか?”とか笑ってごまかされて終わるケースがほとんど。
しかし、彼女は、教えてくれた……
「脈あり」
そう熱い想いを口にしたら、口にしていたスープを噴き出さんばかりのウメちゃんが笑った。
「早っ」
そこからはもぉ~もぉ~もぉ~……僕が織りなす彼女模様のキルトを縫っていったさ。家庭科では、裁縫が得意だった。
で、なんでこんなにも書くかというとだな??
彼女のその名があまりにも衝撃的だったから。
思わず出た感想がこれだった。
「なんかエロゲーみたい」
いやいや、顔がそうなら、名前も素敵さ。
もうかれこれ27年生きてきたけれども、こんな素敵な名前は聞いたことがない。それこそホント小説だとかドラマとかでしか見聞きしたことがなかった。
思わず聞きなおしちゃったし……ビビった。
“シイナ”
……シイナ。
漢字はわからんが、なんと素敵な名前なんだろう。
……シーナ……椎名……詩唯奈……志依那……松田シイナ……
悪くない。うん、全然悪くない。
なんとも呼びやすい。
呼びやすい名前ってのは、いい名前だ。
たぶん、その人にとって呼びやすい、呼びづらい名前ってのがあって、そのへんの感じ方、フィーリング、感覚、心地よさみたいなのも、きっと恋人を選ぶときの要素に入ってるんじゃないかとさえ思ふ……
そこで俺様、ちょっと今思いついた。
人にすぐあだ名をつけたがる人っている。
そういう人ってたぶん、なんでも自分の思いどおりにしようとしたがる傾向にある人なんじゃないかと……
なにも変える必要はない。
なのに、自分が呼びやすいように言い換えてしまう。人の名前でさえもだ。
それで、“自分が最初に言った”と自慢げな顔……
よくあるのは、恋人になると呼び方が変わるってやつだ。
まあ、そのへんは恋人は自分だけのものだとか、所有欲だとか、自分のなかでの他人との差別だとか、そのへんの心理はとっても微細かつ繊細なものもあるんだろうけど、たぶんあるかと思われる。
たぶん、どっちもたいして変わらんな。
うむ。
一日一恋。
一語一恵。
- November 20, 2005 2:18 AM
- [ ゲロ古 ]
- Catch me, If you can -
風邪だ。
風邪だよ、おトメさん……
恋人とキスするより先に、病魔とのそれのほうを早く迎えたらしい。
『Oneのふたり言』でもいいだけマフラーだ何だと豪語してたにも関わらず、俺様自身がだれより先に、我先にと風邪をひいたようだ。
ピークは昨日だったように思える。
喉の痛さが尋常じゃなかった。
これまでにも多くの風邪をひいてはきたが、5本の指に入る激痛じゃなかったろうか……ホント猛烈でした。
俺様、風邪は喉にこない。あんまりこない。
たいがい鼻から。
そんなときは黄色のベンザ。
しかしだ。
こんなにもひさびさ。
鼻水がシャーシャーと流れ落ちるとか体がボコボコ熱いとかぐらいなら、それなりにはあったけども、こんな寝込むぐらいのは、もぉ~そうだなぁ~……恋をするよりひさびさじゃなかろうか??
風邪ってこんなにつらかったんだな。
これなら失恋したほうがまだマシだ。
いやいや、これは絶対病院のせいだよ。絶対そうだ。
病院なんて、ただでさえ病人の溜まり場だし、菌を保有してる人たちがそこここでウロチョロしてるってのに、そこへさらに人間として弱になってる状態で入ってくんだからなぁ~。
しかもあの日は、2時間前から水分補給を制限された状態……
そしてエアコンもガンガン入ってる院内ときたもんだ。乾燥しまくりっしょ。
そりゃもう、長年打ち勝ってきたはずの風邪菌にもやられるってなもんよ。
病院もあったかくするのはいいんだけど、エアコンつけるなら湿度もちゃんと一定に保とうぜ。
ありゃ菌の温床にさせてるのと同じじゃよ。
でもそう考えるとだなぁ~……
これは、ただの風邪じゃないような気がしてくるわけ。
たかが風邪菌になんぞ、かする程度ならまだしも、もう二度とやられない体と免疫力が備わってたはずだ。
なのにこの状態……摩訶不思議なり。
こないだ“鳥が進化してスペイン風並みのが流行る”ってウメちゃんの言ってたやつか??
40年周期なんだそうな……そして今年がちょうどその時期なんだとさ。
致死率も半端じゃないとのことだ。戦争のそれなんて目じゃないとウメちゃんが言っていた……
でも実際そんなのにかかってたら、昨日1日寝たぐらいでここまで回復しないだろう。
喉の痛みも腫れもそこそこ引いたし、鼻水は、滝から鼻血程度におさまってるらしい。
とりあえず喉の痛みがゼロになってもらわにゃ困るな。
歯の違和感もまだとれてないし、それに加えて風邪ときたもんだ……こういうのって重なるんだなぁ~。
こんなことなら、手術した日、たいして痛くないからって調子こいて夜更かしなんかするんじゃなかったよ、マジで……
たぶん麻酔ってのは、眠くもなるんだろうが、と同時に、免疫力も下げるんじゃなかろうかと思ふ。
フラフラになるってのは、地球や重力、引力への抵抗力がなくなってるってことなんじゃ??
もうメチャクチャだ。
この親知らずの抜歯、絶対俺様の人生において、何かしら大きな転機になるとは思っていたが、風邪だけにとどまらずとも、ホントになりやがったな。
ルルも飲んだし、カロリーメイトも食ってるし、今日中に治してやる……
風水パワー全開じゃ!!
いや、とりあえずちゃんとしたメシを食おうか。
そうだ、そっから始めよう……
昨日はずっと寝込んでてできませんでしたが、ちゃんと『Oneのふたり言』の更新はします。よろしく。
- November 18, 2005 3:26 AM
- [ ゲロ古 ]
- BASHING -
結論 : 思いのほか、痛くなくね??
さぁ~て、どっから書いたもんか……
書きたいエピソードはたくさんある。
が、それを全部書いてたら、すこぶる長くなりそな感謝デー。
そんな短編集にでもしてみようか……どうか。
予約時間は、9:45……“少なくとも、9時半までには待合室にいらっしゃるようにしてください”
到着時刻、9:29……すべてにおいてハナマルだぜ、俺様よ!!
この病院では、対人で受付するするのは外来でも、きっと入院でも初診のときだけらしい。
再来院の際には、玄関ドアのすぐそばに、それ専用の機械があって、そこにクレジットカードみたいな診察カードを突っ込むだけで受付手続きが完了する。あとは目的の科に赴いて、待ってるのみ。
ただ、そこに立ってる一人のおばさんがいる。
白衣でもない。いや、白衣なのかもしれないけれども、そうじゃないかもしれない。紺色のVネックなのか、そんなインナーをそのなかに着てた。いや、着てたっていうより、ハメこんでたっていう印象のほうが強かった。
ということで、以下、思い出したら“おばさんV”としよう。
ズボンも同色っぽく、小学校の男性教諭が仕事着として穿いてそうなものだった。ピッチピチではないんだけど、ストレッチ素材で、それには、淡いスカイブルーのものを小学校のとき三浦先生が穿いていたのを憶えてる。だからきっと鮮明だ。
で、そのおばさんVは、ホントそのためだけに、そこにいるようなのだよ。
それ以外の動き、それ以外の場所、それ以外の表情を見たことがない。
患者として行ったのは今回が初めてだけど、病院内に足を踏み入れたのは、これまでにも何回かあった。
そして、そのたびにいた。
俺様が慌てた様子でそこへ行くと、そのおばさんVが丁寧にもカードの差込口に水平チョップの静止バージョンの手を差し添えてくれた。
まるで≪石炭の歴史村≫で見学に来た子供たちを泣かすこともあるという、あの遠くから見ると妙にリアルな小芝居人形みたいだった。
まあいいさ。
俺様はあらかじめ出しておいた財布から自分の診察カードを、そこに挿入。
画面が切り替わって、“確認”というボタンのところへまた水平チョップ静止バージョン。
「あ、はい」
押した。
もう1つある同じ装置のほうにも人が来た。おばさんVがそちらの応対へ。
カード差込口の左側にある装置から、ゆっくりと紙が吐き出されてくる。
俺様はそれを眺めながらカードを財布にしまっていた。
全部出たところで、その紙が落ちた。俺様も取ればいいのに。
「ああ、どうもどうも」
おばさんVが、快く拾って俺様に手渡してくれた。
“受付票 120番 歯科・歯科口腔外科”
“中央点滴室”
口腔外科の待合室という感じのロビーへ行く途中、廊下で見かけたプレート。
<ああ、あとでここに来るんだな>
それを横目に察知しながらも、僕の視線は、その隣で柱の影から半分だけ体を覗かせる白衣の天使を素通りすることもしなかった。
髪はたぶん、アッシュを含んだ茶色。ポニーテール崩れみたいな感じで、全部が黒目なんじゃないかと思えるほど目もとの印象的な人だった。でも、その小麦色も目立つせいか、肌の凹凸も浮き彫りになっていた。
まばゆいはずの白昼カラー蛍光灯も、なんだか安い緑茶でも混じってるんじゃないかという感覚にさせるような、生々しい生死のどよむ空気のなかを歩を進めて行った。
待つ……待つ……待つ……待って待って、待ちまくること43分。
やっと俺様の番号がカウンターのお姉さんから呼ばれた。いそいそとそこへ向かう。
「では、保険証と2枚のカードをお願いします」
「え?? 2枚のカードですか??」
「ええ、これと、このカードです」
「ああ」
俺様はまず、財布から2枚のカードを、それからリュックのデカいところから保険証を取り出して渡した。
「保険証はすぐにお返ししますから」
そのまま待ってろってことですね??
「はい」
「はい、よろしいですよ」
「どうも」
「では、お掛けになってお待ちください」
「はい、待ってます」
笑いやしねぇ~。チクリとも笑いやしない。
それからさらに、お掛けになってお待ちした時間は、正味24分。
手袋をリュックにしまったり、ウォ~クメンのイヤホンコードをなおしてみたり、リュックの向きを変えてみたりした。
リュックのなかにあった紙切れを取り出して読んでみた。それで知ったのは、冷やしちゃダメだってこと。
テレビとか家庭では、とりあえず歯痛は冷やすというのが掟ってなぐらいに冷やす。家庭にはアイスノンがあり、氷があり、湿布がある。テレビじゃ頭に白い包帯巻いてたりする。
でも病院からもらった紙には、こうある。
“熱っぽくなったり、はれたりした場合に気持ち良いからと、氷やアイスノンなどで冷やすことはやめて下さい。どうしても冷やしたい時には、ぬれタオルで冷やす程度にして下さい”
『手術後の注意』
「受付番号120番の方、歯科口腔外科の診察室へお入りください」
今じゃ機械の合成音さ。
不安でいっぱいな僕の心はぬくもらない。
さらには、囚人じゃあるまいに、番号でしかない。これぞ大病院って感じで、個人情報保護とかもあるとは思うが、そっちのほうがラクってことだろうさ。結局、何回呼んでも来ない人に対しては、探しに行くわけでもなく、マイクで番号と名前呼んでるし。
そして僕がなかへ入って行くと、診察室の入口そばには、お世辞にも天使とは呼べない看護婦さんが一人立っていた。
まずは名前の確認。それから本題。
「今日は静脈の麻酔で歯を抜くということなんですが、体調のほうはどうですか?」
最悪です。
「あ、はい。きっとだいじょうぶだと思います」
「5時間前からお食事はとってらっしゃいませんか?」
「はい」
「では、2時間前から飲み物も飲……」
「はい、そのへんはもうバッチリです。しっかり守ってましたから」
たくさんうがいしたとき、ちょっとずつ飲んでたとは思うけどね。
「今日、お車で来てませんか?」
「はい」
自転車ですから。
「そうですか。では、まずは点滴を打っていただくので、ここの“中央点滴室”へ行ってきてください」
やっぱり来た。でも、天使はもういなかった。
手渡されて持っていった基本票を、それ受けのカゴに入れ、その向かいの壁面にもたれかかって腕を組むという、ちょっと余裕なんぞ見せたぐらいの格好で待機。
4人ほどの女医さんには、まるで興味なし。
紺色のカーディガンを羽織った看護婦さんに呼ばれ、なかに入ると、ベッドへ先導された。
「では点滴打ちますんで、寝ててもらってもよろしいですか?」
「はいィ~」
もうため息だった。“いィ~”より“ひィ~”のほうが、より的確な表現かもしれぬ。
ベッドで横になる。
もうどうにでもなれだ。なるようになるさ。なるようにしかならないさ。もうここまできたら手術してもらって回復を待つしか能がない。能なしだ。形なしだ。
もう普通に眠かった感じもあるので、そのまま寝てやろうと試みた。腕で目を覆ってみたり、いつもの寝ポーズを真似て死人のように胸の上で両手を組んでみたりした。
が、ダメだった。全然ダメ……心臓ドキドキしすぎ。
やがて、看護婦さんが来たらしい。
目を開けると、点滴セットの下にかがむ看護婦さん。
「あの、痛くないですよね??」
「ああ、痛いよ? そりゃちょっとは痛いよ?」
その看護婦さんは、なんとも素敵な口調でそう答えた。まさにフレンドリー。
待ってましたよ、こういう人を!!
しかもマスクをしてて顔の全体は見れずとも、かわいい感じは一目瞭然。目元が優しくあり、かつ刺々しい。
「まあ、そんないきなり脅してどうすんだって話だけどね。でもそんな、最初、針刺すときだけ、チクッとだよ? ちょっとだけ。痛いの嫌い?」
「ええ、とっても。注射も嫌い。もう帰りたいです。今日ももうバックレようかと思ってましたから」
「バックレるって……」
また目を腕で覆ってみるものの、看護婦さんは手際よく準備を整えていくのがわかりすぎるほど、よくわかった。
「……でももうそれつけちゃってるし、帰れないんだけどねぇ~」
「それはそうなんですけどね」
なんかその看護婦さんの言葉にゾクゾクするようなものを感じたのを憶えている。
なんだかわからない。
この看護婦さんには、人と人との距離を感じさせない魔力があるように思えた。親近感とでもいいましょうか。安心とでもいいましょうか。
近所であんまり逢うことはないんだけど、逢ったら気さくに話してくれるキレイなお姉さんみたいな感じだ。
看護婦さんてスゲェ~……でも看護婦さんはこうでなくちゃな。
というか、この病院でこんなにも気さくに話してくれた看護婦さんをほかに知らないだけかもしれないが。
「あ、でも、ちゃんと痛み止めとかもらえるはずだから、だいじょぶだと思うよ?」
「そうですの?? あ、そういえば」
「ん?」
「痛み止めで一番効くのって、坐薬だって今日、聞いたんですけど、坐薬ってありますか??」
「ああ、だったらそやって言ってみてもいいかもねぇ。くれると思うよ?」
「じゃあ言ってみます」
「うん、わたしも一応そやって言っといてあげるから。はい、手のひらグーにして力入れてねぇ」
そしてキツくゴムの管を巻かれた腕がビシバシたたかれる。ちょっと止まって、また角度を変えてさらにたたかれる。
なんのお仕置きだ??
イテッつの!! そんなに注射打ちづらい腕じゃないぞ?? けっこう褒められたぞ?? 血管星人だぞ??
「じゃあ、痛くないように、子供にするみたいにおまじないする?」
「ぜひ。うん。してください」
“痛いの痛いの飛んでいけぇ~”とか、そこに“人”とか書いてくれたりとか、そんなおまじないを心から期待していた。
「じゃあ、アルコールで消毒しますからねぇ~」
「はいィ~」
「今おまじない中だから」
……無言じゃねぇ~かよ。子供騙しにもなってやしねぇ~。単なる儀式でしょうが!! 大人の義務でしょうに。
腕がスースーする。
「はい。じゃあ、いくよ?」
「……はい」
ついに来る……
痛っ!!
チクっじゃねぇ~よ、それ!! 小学生のとき打って普通に我慢できた血管注射より痛ぇ~よ!!
「どう? 痛かった?」
いや、“痛かった”っていうより、地味に今もチクチク痛むんですけど……
「……ひさびさに“痛さ”っていうのを感じた気がします」
「そう? でもちょっとだけでしょ? あ、手ぇもうラクにしていいよぉ」
「あ、つい力入っちゃって」
たぶん俺様の掌は真っ青だったに違いない。かるく痛かったくらいだ。
「じゃあ、衛生士の人迎えに来てくれるから」
と、その人は去って行った。
そして誰もいなくなった。
腕から登る管をたどれば、その途中で点滴の雫が1滴、また1滴と落ちる。
まずは、なぜか腹あたりの体温が急激に下がったような気がした。それから全身の血の気が引いていくような感覚があって、さらに視界が色味を失っていくかのように青白くなってくような……点滴してるほうの腕も、かるく痺れはじめていた。
そんななかではもう、僕の鼓動よりも静かで悠長なカウントダウンを数えることしかやることがなくなった。
だからしばらくは、それしかしなかった。
そのまま寝たかった。
本当は昨日徹夜して、グロッキーなまま行こうかとも思ったぐらいだ。麻酔なしでも普通に寝れるぐらいにしておけば、なんら問題ないような気がしたからである。
でも先刻同様、動揺がさらにふくらんでムリの骨頂。
なにもすることがない暇人ほど妄想の虜になる。
隣は“中央処置室”だ。
もしかしたらこのまま寝るのを待っていて、ここで手術が行われるんじゃないか??
そして衛生士の人が迎えに来るっていうのも、気づいたら“お大事にぃ~”って送り出してくれるんじゃないか??
はたまた、あまりに寝ないからまた点滴打たれるんじゃないのか??
「……はい、では口腔外科のほうに戻りますんで」
「あ、え??」
看護婦さんがベッド脇にやって来た。さっき言ってた衛生士さんだろうさ。島田さんの“まさか!?”っていう番組でアシスタントを務める女子アナさんに似てなくもない。
「あ、戻るんですか??」
「はい。だいじょうぶですか?」
「ええ、だいじょうぶです」
僕はベッドから立ち上がった。点滴を吊るす棒を自分で支えながら、出口へと向かう。
「ありがとうございましたぁ~」
だれに言ってるのかわからない衛生士さんのお礼に、僕もなぜか倣った。こういうことは多い。
「あ、どうもありがとうございましたぁ~」
いろんな人の声にかき消され、ない交ぜになって相殺され、ほぼ無音のなかを漂っただけのように感じた。
人込みはむなしすぎる。
「あ、自分で持ってくださいね?」
「あ、はい」
「ああ、ここを右手で支えて」
「ほほう」
「あ、いや、左手ですね」
「なるほど。そうみたいですね」
“中央点滴室”を出るまでも出たあとも、僕は殊更点滴を気にしていた。
衛生士さんもそれに気づいてくれたらしい。
「そんなに気にしなくてもだいじょうぶですよ? けっこう丈夫ですし、そんな簡単にはずれないですから」
「あ、ええ……」
僕はそこで立ち止まった。
そこで衛生士さんは、僕の隣に、僕と同じく点滴をぶら下げたじいさんとばあさんが2人いたのを知って、ちょっと脇に寄りながらこちらを振り返った。
「いや、あのですね?? 実はちょっと、地味に痛いんですが」
「え??」
すると、きちんと手入れされてそうな衛生士さんの指先が2本、クロスにテープで貼られた点滴の針の部分に触れた。
そして、なにを思ったか、テープの中央に盛り上がったそこの部分を押っつけやがった。そこ、針だろうが!!
「ここですか?」
「………」
なんもしてない状態で痛いっつってんだから、押したら痛いに決まってんだろうさ。
「こっちですか?」
「あ、いや、なんかこう、全体的に」
衛生士さんは指を引っ込めると、うーんと首を傾げ、“集中処置室”の受付の近くにいた別の看護婦さんに近寄った。なにやら話したあと、別の看護婦さんがこちらにやって来た。
その看護婦さんも衛生士さんのように指先をまず針の部分に添えた。そして、案の定、押した。
「ここですか?」
「いえ」
「こっちですか?」
「いえ」
「じゃあ、針が刺さってるところですね。こっちが痛いっていうことであれば、なにかしらあるかもしれませんけど。だいじょうぶですよ。でも、もしなにかあったらやりなおしますし」
「あ、はい。どうもです」
「じゃ、行きましょうか」
なんか思いっきり腕のなかで針が蠢いて、血管の表面を内側からチクチクやってるとしか思えないんですが、そうですね。それは良しとしましょうか。
「はい」
しばらく廊下を歩いたところで、衛生士さんに言った。
「あの、痛くないですよね??」
「ああ、痛みとかってやっぱり個人差ありますから。一概には言えませんけど、でも麻酔打ちますし、寝てるあいだに終わりますから、だいじょうぶですよ」
「ああ、まあそうなんですがね?? 問題なのはその、麻酔が切れたあとです。やっぱ痛いんでしょうか??」
「それも個人差ありますけど、やっぱり少しは痛みもあると思いますよ? 苦手ですか?」
「はい、大嫌いです。逃げ出してもいいですか??」
衛生士さんが笑った。さっきの看護婦さんに続いて、笑顔を知る女性2人目発見。
「でもだいじょうぶですよ、きっと」
俺様はこうして、徐々に気分も上向きになりつつあるなかで、口腔外科へと戻っていくのであった。
衛生士さんのあとをついて診察室の奥、僕にとっての“トワイライト・ゾーン”へ……と、さらに奥だった。ミステリーだ。完全なる未知の領域へと足を踏み入れようとしていた。
今までの人生で行った歯医者さんでは一度も相まみえたことのない場所だった。
カーテンで仕切られたなかには、テレビでしか見たことのない小さな心電図まであった。電源が入っていたわけじゃないけど、僕の本能がそう告げていた。
もう衛生士さんも見えちゃいない。
自然と僕の足は、その中央に設えられた拷問チェアへと吸い寄せられていた。
「では、そこに座ってください」
「はい」
と、なにがそうさせたのか、衛生士さんの声音が微妙に揺れたのか、僕はそちらを振り返った。
発見だ。
ついに発見だ。
僕がここへ通うための理由……ボロカス可愛い看護婦さんだ。しかも最初っから笑顔との遭遇だ。
もし有名人さんを投影するのならば、仲間さんと浜崎さん、新山千春さんと奥菜恵さんを連立方程式で解き、そこに専門学校で知り合ったエミさんを足した感じだ。漢字で書くと、一般的には読めなそうなのでカタカナにしとく。
以下、“仲浜千恵美”さんとする。
そんな彼女が、入口の縁に両手を添えて寄りかかるように、なにやら小さな声で衛生士さんと話していた。
僕は椅子に座るのも忘れ、そこに突っ立ったままだった。
視線がかち合った。
「あの……」
「はい?」
衛生士さんがこちらを振り返った。
「……なにをお二人でヒソヒソ話でお話になっておられるのでしょうか。なんか僕、マズいんですの??」
いやいや、その看護婦さんも衛生士さんも笑っていたから、わかっちゃいたさ。でも、このチャンスを逃す手はないでしょう。
「あ、いや、シフトのことで早出だったのを聞いてたんですよ。それでわた……」
仲浜千恵美さんが答えてくれた。同じ笑顔だ。素晴らしい。
と、そのとき、背後でカーテンがズバッと開けられ、野太い声が遮った。
「おい。今診察中なんだよ」
「あ、はい。すいません」
衛生士さんは準備を再開し、仲浜千恵美さんは去って行った。
「では、そこにお掛けになってお待ちください」
「はい」
てめぇ~……声の主はわかってる。
俺様の担当のやつだ。
小さくまとまったやくみつるさんみたいな顔しやがって……なにを偉そうに。
ドクターは先生じゃねぇ~。
病気を治せる術を教科書で習ったってだけの、いわば“教科書ガイド”を販売する業者さんみたいなもんだろう。
僕らを癒してくれるのは、看護婦さんなんだよ。
初診のときだって、2本あるうち今回の親知らずのほうを抜くっていう選択の理由が“なんか起こってそうだから”ってなんだよ。
“なんか”ってメチャメチャ気になるじゃん。怖いじゃん。心細いじゃん。
大病院でなんかすごい肩書きあるかもしれんし、受付の人がいくら無愛想で仮面接待してようが患者さんは来るだろうけども、さすがにそれはないだろう……心のケアはどうしたんだ??
せっかく、どんだけ待たされても痛くても、大嫌いな歯医者でも、ここに通ってもいいって感じさせてくれたひとときを、それをおまえってやつは……
やくさんには悪いけども、どんなに髪の毛を染めたところで、将来あんなふうに染めたところも風になびいちゃうようになっちゃうんだよ!!
“チェンジ!!”って本気で叫びたかった。
まあいい。
俺様も治してもらう身だ。そのへんはもういい大人なんだし、やりすぎも良くないさ。
病院ってところは、芸能人さんよりもスキャンダルが命取りで、評判第一だろうし……
まあ、そのへんは後述することにしよう。
で、衛生士さんともう一人、新しい人が入ってきた。
血圧計を腕に巻き、ポッチを胸に、腹に、“すいません”と言いながらつけてもらった。
以下、“血圧K”さんとする。
「緊張してます?」
「ええ、すごく」
「こういうの初めてなんですか?」
「はい、初体験です」
「初体験て……でもだいじょうぶですよ。寝てるあいだに終わりますから」
ここまでの会話だけなら、もうそういうお店での会話って感じだな。でもそれなら寝てるあいだに全部終わっちゃうのは惜しすぎる。ちゃんと目を開けて、最初から最後までの一部始終をしっかりと記憶と肉体に焼きつけておきたいもんだ。
ってか、生きてるあいだに1回ぐらいは、そういうお店のお世話になってみたいと思ふ。
でもいまだ、行こうという気になったことすらない。
「ええ。ホント、寝てるあいだに全部終わらせちゃってください。よろしくお願いします」
「はい」
この人も親しみやすい人だった。アハハと大きく笑う。とっても嬉しい。
空気が和むと、心も和むというやつだ。
また新しい人が来た。
今度はピンク色の服を着たボーイッシュな感じの人で、手袋をはめていた。左手の先端や中腹部が、かすかに赤かった。明らかに血だった。鮮血のレディ・ジョーカーだ。
まわりを見渡すと、言った。
「ちょっと手ぇ洗ってきていい?」
「はい、どうぞ」
衛生士さんが気軽に答えた。
点滴の減り具合を眺めていた僕だったけど、なんとかその人を呼び止めた。
「あ、あの」
「はい?」
「もう始めるんですか?」
「いえ、まだですよ?」
「そうですか」
とそれだけ答えると、その人はどこかへ行った。
没。話せない人は論外。
どんどん人が入ってくる。それにともなって、どんどん僕の不安も加速していった。
でもそんななか、血圧Kさんをなぜかすごく近くに感じていた。
最初に入ってきたとき、うがい薬でうがいしてくださいと言われて、うがいしようとしたら、“あ、ごめんなさい。点滴、邪魔でしたね”と微笑みながらどけてくれたのが血圧Kさんだった。
まあ、もしここに仲浜千恵美さんがいてくれさえすれば、どんなに遠くたってそう距離は感じないはずだ。いやそれは、僕が近くに感じようとするからだろう。
「この血圧計、5分置きにかるく収縮しますんで」
「はい」
1回目……キツッ!!
そりゃもう左腕はビッチビチだ。僕の血管が張り裂けそうになる。
そして2回目……早くね??
「じゃあ、よろしくお願いします」
カーテンで仕切られた向こう側から、老いた声が聞こえてきた。
それからすぐにカーテンが開けられ、ヤツがこちらにやって来た。
ホッと胸が安堵したのと、また仲浜千恵美さんのことを思いだしたのとで複雑すぎた。
さっきは“チェンジ!!”アゲインするとこだった。
オイオイ、さっきは俺様の楽しいひとときを邪魔した挙げ句、しまいには担当医みたいなことをぬかしておきながら、手術は別の人に任せる気かよと……
やつが僕の隣のスツールに腰を下ろす。
「あ、もしかして、すごい緊張してる?」
「はい。すごく緊張してます」
「そっかぁ~。でもだいじょうぶだよ、緊張しなくても……って、正直だねぇ」
「はい。もうイヤです」
「イヤって……じゃあ、眠たくなる薬入れますよぉ~?」
え?? まだだったの??
じゃあ、この点滴とあの点滴はなんなのよ……そりゃ眠くもならんわな。
きっとあのときの錯覚は、本当に錯覚だったんだな。きっと針を見たのと、痛みのせいだったんだろうさ。
「はい、お願いします。って、あの」
「はい?」
「本当にすぐ眠くなるんでしょうか?? あの、全然眠くないんですけど」
「ああ、だいじょぶだいじょぶ。すぐ眠くなるから……はい、入ったよ」
「はい」
「あ、それに」
血圧Kさんがあとを引き継いだ。
「お顔の上に口のところ以外シートかぶせますんで、もしあれだったら寝ててもいいですよ?」
「はい」
「薬入れたらもう動けなくなるんで、なにかあったら声かけてくださいね?」
「はい」
そう言われると、みるみるうちにまた全身の血の気が引いてくような感覚に覆われていった。すぐに唇の感覚がなくなった。右半身が痺れたようで、頬も引きつるような心地悪さだった。かるいHeavenが見えた気もした。
俺様は身のまわりで動きまわる人たちの影を追うようにして、自分の存在の曖昧さのなかに漂いはじめた。
「じゃ、シートかぶせますねぇ~」
「はいィ~」
そして顔にシートがかぶせられた。
口のところだけが、たぶん台形に穴のあいたシートだった。競技場でトラックに敷いてあるようなやつだった。ゴムと砂の感触だ。
準備が万端整ったらしい。
ふと、体にかかる点滴の管が邪魔だったので、左手で払おうとした。
そしたらすぐに、女の人の手に優しく制された。ホントにすぐだった。
邪魔なんです。うとましいんです。気になるんです。管が僕の腕の上をプラプラするんです。
でもあきらめた。
シートがズリ落ちてきていた。
気持ち悪かったので、それを口だけ動かして元に戻そうとがんばった。
誰かがすぐに手で戻してくれた。
寝心地も悪いので、体の位置をズラそうとした。
そしたら今度は声が聞こえた。
「動かないでくださいねぇ~」
衛生士さんの声だった。僕も返事をした。
「はい。すいません」
もうなにもできなくなった。
やがて、気がつくと周囲からなんの物音もしなくなった。
不安が脳裏をよぎった。
………。
……心配すぎる。
オイ、患者一人で置き去りかよ!!
俺様は、なんとか口もとの隙間から見える範囲で覗いてみた。
だれもいない??
「あのぉ~……」
「………」
「すいませぇ~ん??」
「………」
「ひょっとして、だれもいないんです……」
「あ、はい?」
血圧Kさんが答えてくれた。
「あのですね??」
「はい、どうしました?」
「全然眠くならないんですけど、だいじょぶなんでしょうかぁ」
「ええ、だいじょぶですよ? さっきお薬入れましたし、もう効いてきますから」
たしかに、口のなかも唇も、さっきまでは右半身だけだったのが、もうほとんど全身の感覚がなくなっていた。かるく吐きそうでもあった。
野郎がさらに言った。
「だいじょうぶ。すぐ眠くなるから」
そう言われると、眠らないわけにはいかない。
僕は大きなまぶたの裏で静かに目を閉じた。
「じゃあ、口開ける器具入れますからねぇ~」
「……はい」
俺様は口を大きく開けた。
なんかゴッツい金属が俺様の口のなかに入ってきて、両脇をしっかりと固めた。
寝てるあいだに突然口が閉じたりするのを防ぐためらしい。術前に説明を受けた。
「もちょっと口開いてぇ~」
「はい」
俺様はより大きく口を開けた。
「はい、入ったよぉ~」
ん??
なぜ俺様は律儀にも答えてんだ??
寝てんじゃないのか??
寝てる間に終わるんじゃなかったのか??
待て……待て待て待て!!
「ンガ、ンガゴ、ガゴ……バダデデダイングゲスゲド」
んが、んあの、あの……まだ寝てないんですけど。
「ん? なに?」
「ンガ、あ、あの、まだ寝てないんですけど……だいじょうぶなんですか??」
「うん、だいじょぶだいじょぶ。麻酔は効いてるから全然痛くないよ?」
「え?? 寝てる間にって……」
「じゃ、始めますよぉ~……あ、じゃあ、20c足して?」
<寝てねぇ~だろうが!! オイこら!! やく崩れが!!>
こうして俺様の口は、しなやかさも繊細さのかけらもない指を押し込まれ、それから先ずっと閉まることはなかった。
無論、それから先のことはすべて、俺様の意識のなかに届いてきた。たぶん器具がぶつかり合う金属音のその1つ1つでさえも……
途中、やつの声を聞いた。
「ちょっとガツンてするかもしれないけど、いいかな?」
よくねぇ~よ、ボケが!!
「だいじょぶだからね」
俺様は寝てんだろうが!! そんないちいち断りなんて入れなくてもいいじゃないのさ!!
そしてガツンとやられた。ありゃ絶対トンカチだ。パンチがきいてるねぇ~。思いっきり振り下ろしやがったよ、あのやろう……しかも3発。
ガツン。ガツン。ガツン。
っていうか、そのとき俺様、さすがに声出たわ。
「ッツっ!! あの!! あのぉ!! なんか痛いんですけど……」
麻酔なんぞ効いてやしねえ……このときも麻酔足してやがったな。
看護婦さんたちの笑い声でさえ聞こえた……“平井賢がどうのこうの”……“この人けっこう好きかも”だのなんだの……
そして僕が最後に聞いた言葉はこれだ。
「はい!! 終わりましたよぉ~」
……おまえらバカだろ。
その終了の言葉を聞いたあとで、僕はきっと眠りに落ちた。
起きてみればすぐに、その拷問チェアから、向かいの薄暗い専用休養ベッドへ移った。
まあ、けっこう悪くないベッドだったんだけどもさ。
さんざん聞かせてくれた“僕が寝てる間に”っていう言葉は、単なる気休めだったのかと思えて仕方ない。
さすがにビビりすぎてたか、俺様……
始まっちゃえばもう、あとは回復を待つだけだから、とにかく手術を受けることが先決か……それも一理ある。
いや、それこそが医者の務めか。その人のためを思ったからこそ、心を鬼にして嘘も方便てやつか。
やがてベッドの上ではたと目を覚ました僕は、ひとりぼっちだった。
なんとも落ち着いた……
とりあえず、頬に手を触れてみる。
腫れてない!!
麻酔がまだ効いてるとはいえ、まるで腫れてないじゃないですか!!
上体をベッドの上で起こしてみた。
すぐに看護婦さんが気づいて、駆け寄ってきてくれた。衛生士さんだった。
「だいじょぶですか?」
「あ、ええ……はい。たぶん」
「あ、でも、もうちょっと休まれたほうがいいですよ?」
「あ、そうですか? でも、いえ」
「もうすぐに帰られますか?」
「ええ、そうですね」
「そうですか? だいじょうぶですか?」
「はい」
僕はいったんベッドの端に座る格好でしばらくいたが、すぐに立ち上がろうとした。
「あぁ~ぁ~~~~」
恐ろしい……麻酔の力は侮れねぇ。テレビで見る場面を、身をもって経験した。
「だいじょうぶですか?」
「あ、いや、だいじょうぶです」
「もう少し休まれたほうが……」
ハタから見れば、そんなふうには絶対見えない状態だったんだろうな。自分でもそう思う。
「いえ。帰ります」
なんでこんなに意固地になったのかは、自分でもわからない。
とにかく家で、自分の部屋で休みたかったんだろうな。自室最高な人間には、やっぱりそこが一番いい。
しっかし危ねぇ~……
視界がまわったりはしなかったけども、まっすぐ立てないわ、3秒以上立ってられないわ、歩こうにもちゃんと歩けないわで、看護婦さんも何度も手を貸してくれようと身をかがめてた。
やっとこさ、診察室を出て自分のジャンバーとかを身にまとったけども、それすら危うい感じだったように見えたんだろう。
とにかく親知らず1本とおさらばした僕としては、精神的には気分も上々で、待合室のロビーに出るまで「はぁ~ぁ~」とか雄叫びを上げたぐらいだった。
ただ肉体的には、千鳥足もいいとこで、かなりふらついていた。
たぶんロビーで自分の番を待ってた人には、“なかで何やってきたんだ、こいつ??”みたいに映ったことだろう。それぐらいひどかったと思う。
でも看護婦さんはずっとそこを出るまで付き添ってくれて、僕が座るまで見守ってくれていたらしい。
椅子に座ってそちらを見たら、こっちを見て微笑んでくれた。
これが看護婦さんだよ!!
これが看護婦さんなんだよ!!
それをあの野郎は……
いやぁ~まあ、腕はいい。きっとそれは確かだ。
麻酔が切れたころには、本当に出してくれた坐薬をソフトに挿入しようかとも思った。
でも、なんもしなけりゃ、さほど痛くないというのがわかった。いや、まったく痛くなかった。
そのとき俺様は、淹れたての緑茶を啜っていた。
なんつったって、律儀に2時間半前からなにも飲んでなかったのだよ……そりゃ喉も渇きますって。
人間、渇きに弱い。
とにかく水分が欲しかった。
でもって、腹も減ってたし、自分で作った熱々のおかゆを食べようともしていた。キムチまで入れてやがった。
ひと口流しこんで、もうムリとあきらめた。
とりあえずは、冷ましてからにしよう。そうしよう。
と、そんなこんなで今にいたる。煙草も吸ってる。
出がけ、とりあえず衛生士さんにこう訊いてみた。
「あの、もう帰ったら煙草は吸ってもいいんですか??」
「ああ、煙草ですかぁ~」
衛生士さんは困ったような表情を浮かべてから、言った。
「できるだけ今日1日ぐらいは我慢していただいたほうが」
「そうですか」
しかぁ~し!!
“家に着いたら電話するように”ということが紙に書いてあったので、お茶を飲みながら電話してみた。だれが相手なのかはわからない。
そのときにもう一度、ダメもとで訊いてみることにした。
「あの、煙草って吸ってもだいじょうぶなんでしょうか??」
「ああ、煙草ならだいじょうぶだと思いますよ?」
「ホントですか!? ああ、そうですかそうですか!! そりゃ良かった。ありがとうございます」
「それで、痛みとか体調が悪いとかは特にありませんか?」
「ああ、痛いです」
嘘です。ちょっと人に心配してほしいだけなんです。
「じゃあ、とりあえず痛み止めを飲んでみてください。それでもダメなら、もう一度ご連絡ください。あるいは、どうしてもダメなら、もう一度こちらまでお越しください」
「はい」
「それではお大事にぃ~」
「どうもぉ~」
まあ、なにはともあれ、イヤな場所に咲く花っていうのは重要な要素だな。
しかしながら、途中“早出”がどうのこうのという話題も聞けたってことは、仲浜千恵美さんもあの場にいたってことか??
寝てるあいだにいびきなんてかいてないかが、今となっては一番の不安だ……
- November 15, 2005 8:39 PM
- [ ゲロ古 ]
- 親知らず -
………。
………。
……ついに親知らずとの対面が明日に差し迫っておる。
痛くないのと、腫れないのを切に祈りながら、明日、わたしは親知らずを抜いてきます。
今、万単位の出費になるのは痛いが……
今後虫歯になってしまうほうがもっと痛い。
まあ、国保とはいえ、そんな法外な金額になることはないと思うが、それなりにデカい出費になるかと思われる。
とても痛い……精神的にも肉体的にも、お財布的にも立ち直れないんじゃないだろうか。
顔が変形しないことを祈るばかりだ。
万が一のために写真にでも残しておこうか……
しかし、手術の5時間前から何も食べるなとはなかろうて。
寝てるならまだしも、バイトしてるっつの。
さらには、手術の2時間前から何も飲むなって??
それはもう拷問だろうさ。やりすぎじゃないのかい??
まあ、普通の麻酔があまり効かない体らしいし、ビビッてる俺様が悪いのかもしれんがよぉ~。
静脈麻酔だかなんだか知らんが、もうちょっと大目に見てほしいもんだ。
食べ物はなんとか我慢するにせよ、飲み物が2時間前ってのは、人間としてかなりデンジャラスな領域に入るんじゃないのか??
“吐かれたら困る”って、胃液吐くほうがよっぽどダメだと思うが……
とにかく早く完治してもらわにゃ困るってなもんよ。
嗚呼、お願いジャッキー!!
- November 14, 2005 6:08 PM
- [ ゲロ古 ]
- Fallin' LOVE -
ついに降りやがった……
降ってる降ってる降ってる……
今年もまた俺様と神様とが繰り広げるデスマッチの季節がやってきた。
神様も死なねぇ~が、俺様も死なねぇ~な。
でも最近はCO2のせいで神様のほうも弱ってきてるみたいだから、そろそろ札幌にも平和が訪れるであろう。
訪れてほしい。
早ければ早いほどいい。
これでまたより一層、外に出ることもなくなるだろうさ。
つなぎタイプのスキーウェアが欲しいこの頃……
- November 9, 2005 6:14 AM
- [ ゲロ古 ]
ホーム > ゴリカテ “ ゲロ古:ここにいきつくまでのサイト『 Dear 』シリーズとか『 Matsudiary 』とか、かなり遡る日記たち。分類すんのも面倒なので、ここに集約。 ” の列挙
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