起床はmidnight...
ウダウダしていた。
でもやっぱし自転車がないと困る。
なきゃ本日のバイトにも行けない。
いや、行けないことはない。
でも、行く気がいつも以上に失せる。
あれば、バイトには行きたくなくても、自転車に乗れるっていうだけでそれなりに服を着替える気にもなれる。
とにかく自転車。
インターネットでいろいろと良さげな自転車を探してみてたわけだ。
しかぁ~し!!
なんだかんだと探してはみても、結果は同じ。
どうしても欲しい自転車があって、どうしてもそれが欲しかった。
まあ、前の相棒もけっこうガタピシきてたし、そろそろ買い替えかなぁ~……そんなことも胸裏をかすめてたりもしたわけで、ちょうどよかったとも言えなくはない。
なもんだから、余計に欲しかった。
とりあえず、近所にそのお店がないために、まずは在庫確認。
そのお店のサイトの“店舗案内”っていうところを開いてもう、片っ端から電話する気でいた。
でもまだ8時56分。
<いやいや、大きいとこなら誰か1人ぐらい電話が鳴れば出てくれるだろうさ。人間そうそう悪い人ばっかじゃないよねぇ~>
……甘かった。
まるで出やしねぇ~。2分のあいだに3回かけても、僕の切なる想いは届かなかったらしい。
基本的にそっち関係の犯罪者体質なのか……
まあいいさ。
そして手持ちぶさたな感じでサイトを見てると、“9時から”のところと“10時”からのところがあった。
めんどくせぇ~……
買い物とかってのは、そのお店に到着するまでの時間も含めて家を出る傾向にあるらしい。
家から20分かかるお店が10時開店なら??
……そういうこと。
まま。
で、僕のパソコンの時計で9時1分ジャストにまず、1店舗目。
なし。
2店舗目。
なし。
3店舗目。
ナッシング。
4店舗目。
ショッキング。
5店舗目……
毒づきながら、通話をやめたあとで悪態をつきながら、気づけば9時半。
全滅也。
ふたたびウダウダしはじめる。そしてウダウダ言い始める。
「10時までなにしろってのよ……」
案外早かった。
10時開店がこんなにも待ち遠しくあり、待ち通しなんて生まれて初めての経験だった。
9時59分の後半ぐらいから鳴らしてみる。
1店舗目。
相変わらず。
2店舗目。
性懲りもなく。
そして3店舗目。
「あのですね?? ちょっと在庫の確認してみたいんですけど、いいです??」
「あ、はい。どうぞ。どういった商品でしょうか?」
「自転車です」
それから、もう言い慣れてたんで、けっこう冷静な口調で型番とか説明した。別のウィンドウにはPDFで作成されたカタログも開いてた。
「確認してきますんで、少々お待ちください」
「はい」
これももう慣れた。どんなに待ってはみても、在庫のないものは見当たらないさ。
「もしもし」
「はい??」
「今在庫のほう確認してきたんですけども、えぇ~っと……」
「はい」
「……ありません ──」
やっぱり??
どうやらただいま人気商品らしく、今はどこの店舗にもないってことらしかった。
以前にもお客さんから同じ自転車の問い合わせがあって、そのときもなく、いろんな店舗に聞いてみたってことだ。そう言ってた。
ああ、言ってたさ。
まあまあ。
<一応全部かけてみちゃう??>
9店舗目。
「……あ、1台だけありますよ?」
「……」
「……」
「……へぇ~」
それ以外の在庫のことはもう聞こえなかった。
こうなりゃと今回は、とりあえずもうそれがダメだったときのために、良さそうな自転車の候補3台の在庫を確認してもらってたわけだ。
で、このお店は3台ともあったらしい。
「……マジっすか??」
「ええ、1台ありましたけど」
「ホントに??」
「あ、はい」
「“スポーティーに風を切る”??」
カタログの文句も言ってみた。
笑ってた。
「ええ、ありますよ?」
「ナイス!! ベリナイス!!」
「え?」
「いやぁ~ね?? とりあえず全店舗にかけてまして、それでどこの店舗にもないって言われて、さらには6月中旬ぐらいじゃないと入荷もしないってことでして……」
とても嬉しかった。経緯もそのときの気持ちも全部含めて話してみた。
「……それでやっと見つかったわけです」
「そうだったんですかぁ~。お急ぎなんですか?」
「ええ、盗まれました」
「ああ、そうなんですかぁ~」
「ってなわけで、今すぐ買いに行きます」
ひさびさの市街地で、毎度のことながら道に迷った。
でもこれといったトラブルもないまま、無事到着。
そしてダッシュ。
カウンター。お姉さん。
自転車の確認。再確認。
やっと決まった。
電話から担当してくれてたらしい店員のそのお姉さんと話し合いまくること、およそ2時間。
お店のなかで自転車にまたがり、わざわざデカい鏡まで持ってきてもらったり、挙げ句の果てには“彼に乗ってほしいのはどっちですか??”とか訊いてみたりした。
そして、購入也。
「あとほかになにか必要なものありませんか?」
「ありませんか??」
「え?」
「ほかに?? えぇ~っと、そうだなぁ~……やっぱし恋人ですかねぇ~」
「それはちょっとムリですねぇ~」
「ですよね。あ、そういえば、すぐできます??」
「ああ、これから組み立ててそれから整備とかもあるんで、だいたい1時間ぐらいかかるんですけどいいです?」
「いいです」
「ありがとうございます」
「じゃあその1時間、ほかの見ててもいいですか??」
「ええ。時間もつぶれますしね」
「そのあいだずっとマンツーマンでコーディネイトしてもらえます??」
「ええ、いいですよ??」
「Oh, Jesus...素晴らしい」
それからさらに3時間。結局、5時間。
でもとても安いズボン1つ。
在庫なしの泥よけをつけてもらうため、また明日来ないといけないらしいことも決定したようだった。
どっかほかの店舗に在庫があれば、帰りにそのまま行ってつけてもらうとか提案してみたものの、“やっぱり不具合とかがあったとき、店舗が2つとかにまたがってると困るので、できれば1つの店舗で一括したいんですよ”ってあっさり却下された。
「じゃあ、その泥よけがつくまで乗って帰っちゃダメですか??」
それはOKしてもらえた。
ズボンの裾なおしもあるようで、まあいいさ。
もっと苦労を重ねて絆を深めていこうじゃないか!!
そいつは……
“24型クロモリ自転車”
こうして僕の新たな相棒は、家路を快適なままに坂道を上ってくれた。
- June 5, 2005 9:51 PM
- [ ゲロ古 ]