「能力のある人間が、その能力を出さないってのは、ダメ人間だ」

 そして新しい人が入り、数日が過ぎた。
 元の人数でやってるより、仕事が遅くなった。
 まったくもって意味がない。


 結局のところ、新しい人が使えるか使えないかは、その人を教えた人の指導力だと思ってしまう。
 その人のやる気、物覚えの良さ、個人の能力。
 そんなものですら、教える人の指導力だと思えてくる。
 その人のやる気を引き出すのも、指導者の能力のうちかなと。


 その人の物覚えが悪いと、その人の物覚えの悪さのせいにする。自分の教え方に問題があるとかは考えないらしい、人ってやつは。
 能力が低いとかなんとか……
 ダメなやつは、なにをやらせてもダメとか……


 それをできるやつは、自分がもうできるもんだから、無意識にでも相手もできると思って説明したりする。
 それがもうすでに問題ありだ。
 自分らに通じる専門的な言葉を、平気で使ったりする。むしろ、今後はここで働いてくんだから、おまえがそれに合わせろなんて傲慢な態度だったりする。
 そんなんでわかるはずもない。


 自分が教えるべき仕事はすべて教えたんだから、もうあとはできるだろなんて教え方されたところで、できるはずがない。
 それはもう、相手を人間としてみなしてないとすら思える。
 たしかに、仕事は覚えてナンボだし、できてナンボ、結果出せてナンボなことだけど、まずは人を相手にしてるってことを忘れちゃいかんな。


 まま、ここで部活とかスポーツとかを持ち出すのはお門違いかもしれんけど、中高生あたりでは、結局指導者の差でほぼ決まる。
 いや、むしろプロとかさらに厳しいレベルでのほうが、それは大きいのかもしれない。プロっつーのは、もともとの土台となるレベルの高い人たちしか入れない世界だからだ。
 能力、センスのある個人ってのは、たぶん指導者なんて関係なく、どんどん成長してく。というより、その指導者の能力以上、教えることなんてできないなんていうレベルまで成長してくんじゃないか。
 なので、チームとして戦う場合、指導者の役割ってのは、その他の選手たちをいかに伸ばせるかなんじゃないかなと思うわけ。


 完全につきっきりで教えてる。
 そしてその間、新しく入った人と同じペースで仕事をする。
 そりゃ当然遅くなるに決まってる。一人増えたけど、その分できる人間の人数も一人減ったと同じだもんな。
 まあ、新しい環境にボンと入ったわけだから不安だったり、なにがわからないのかもわからないなんて状況でオドオドしちゃうってのはわかる。
 でも、もともといた人間までそのペースに巻き込まれてあげるってのは、そっちのほうが問題だ。


 野村さんが言ってた。
「能力のある人間が、その能力を出さないってのは、ダメ人間だ」


 俺様も同感だ。
 状況判断ってやつだな。

  • September 27, 2007 9:01 PM
  • 松田拓弥
  • [ ゲロ古 ]

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