- *sweatdrop* -

 いやぁ~、今日のバスケはホント楽しかった!!
 ひさびさにワクワクした!!
 もうかれこれ、たぶん10年ぐらい通ってるけど、体育館のバスケでこれほどまでに熱く楽しめたのは初めて……記憶の糸をたどってみても、過去にそんな結び目はない。
 いやぁ~、今日はちょっと楽しすぎたな。こりゃもうクセになりそうだ。


 いつものごとく、ちょっと早めに到着。
 というのは嘘で、雨がけっこう降っていたために、18時ちょうどと少し出遅れた。
 高校ぐらいまではストレッチなんざぁ~したことなかったけども、さすがにこの年になると、自然と入念にやるようになった。
 それでも次の日の筋肉痛は免れない。
 そして今も筋肉痛……
 しかしながら今日は18時ジャストぐらいだったために、ストレッチはかなり手抜きだった。脚で矢印を作るようなやつをやったあと、腕をちょっと引っ張って、アキレス腱をちょっと伸ばしただけ。
 そして、いざ、股のあいだでボールを弾ませながらコート上へ……
 1本目……サパッ……ぅオッケぇ~イ。

 徐々に人が増えてきた。
 大雨だし、人もほとんど来ないかと思いきや、その雨脚と足並みそろえるようにけっこう来だしていた。
<……む??>
 そんななか、やっぱどうしても習慣というやつは抜けないらしい。打とうとしたシュートの手が止まった。

 “北海道”

 胸のど真ん中にそう真っ黒く太字で書かれたTシャツを着ている人が現れたのだよ。

 なんでだ??
 ほかのスポーツは知らんけど、たぶんバスケの選手ってこの“北海道”とか“札幌”とか、そういうロゴの入ったTシャツを見ると、ものすごく意識するらしい。で、それに気づかない人もいない。
 “選抜”ってやつだ。
 そしてまたこういう選手、あるいは過去にそうだった人ってのは、そういうTシャツやジャージしか一般の体育館には着てこない。
 北海道では、それを誇示するかのような作りになっている。背中に“Sapporo”を背負ってたり、胸に“北海道”を掲げてたり……
 いかにもって感じで、わかりやすすぎ。
 しかしながら、不思議とカッコ悪いとは感じないんだな、これが。カッコイイとも思わないけど。
 選抜選手ってのは、選ばれた途端にその知名度が上がる。一気に顔も売れる。名前なんてすぐ広まる。
 一端のカリスマ高校生みたいになる。
 いや、やっぱほかのスポーツ選手も同じだろうな、きっと。
 で、その人が一般の体育館に来ようものなら、気づいた次の瞬間には、あっちこっちで指差し確認ありのヒソヒソ話が展開される。
 その人と一緒に歩いている人もいた。
 これもまた抜けない習慣の1つのようで、とりあえず一緒にいた人のシューズを見る。
 Runbird, Mizuno。シューズの高さはない。くるぶしぐらいまで。使って半年も経ってないか、ほとんど動かない人。
<……つまりは、“ただの友人”>
 見るまでもないんだけど、一応その“北海道”くんのバッシュも確認。
 Air, NIKE。かなり使い込んでる。つま先と足の指の関節らへんのシワが激しい。
<……間違いない>

 でも今回は例外だった。
 明らかにその人は、見慣れたそんな選手たちとはちょっとオーラが違った。
 どうやら一緒に来ている人がいるらしく、ちょっと打ってはその人のところへボールを拾った勢いのままドリブルしながら寄っていく。その一緒に来ているほうの人は、コートの外でバスケ以外のなにかをやっているだけだった。そして“北海道”くんが来ると少し談笑しては、また打ちはじめた。
 とはいえ、ほとんどの人が意識していたのは、現場の雰囲気が如実に物語っている。
 ほんとどの人が、その人の放つボールの行方を目で追っていたわけだ。
 僕もそのへんは例外じゃない。
 今どこにいて、今シュート打ったとか、ヤッベ、はずれたボールこっち来てるよとか、拾うかなぁ~、どうしよっかなぁ~とか……
「あ、どうもぉ~」
 あら?? なんかメッチャ礼儀正しくね??
 選抜の合宿では一体なにを教えられているのか、そういう選抜の人たちってのは、なぜか礼儀正しくおもしろい人が多い。まあ、なかには例外もいたけど。
「あ、いえいえ」
「すいませぇ~ん」
 とまあ、そんなかるぅ~い感じで幕を開けた。体育館ではあたり前に見る光景だった。
 そのあと、あんなことやこんなことが起ころうなんざ、知る由もなく。

<あれ??>
 ちょっとずつちょっとずつ妙なソワソワ感が、僕のなかでたわわに実りつつあった。
<マジで??>
 なんか“北海道”くんが一緒に来ている人とコートの外から、立ったままボールを抱えてずっとこっちを見ていた。
 この状況……経験上、なにを言われるかはだいたいの見当はつく。
 僕はシュートを打ちつづけた。
 そしてついに、彼がボールをポイ~ンと一緒に来ている人に放った。
 来てる。
 来てるよ。
 なんかこっちに走って来てるよ!!
 しかもなんか、すごく楽しそう!!
 そこで逃げるように打とうか打つまいか迷った。
 しかしここは男俺様、打つのをやめた。
 彼が僕の斜めうしろで立ち止まった。
「もし暇だったら、1対1しません?」
 ハイきた。予想どおり。
 恐縮するふうもなく、堂々と楽しげに語りかけてきた。
 友達と来てる人が知らない人に申し込むってのは、あんまりないけども、そこまで珍しいことでもない。そしてそれは、同時に自分にけっこうな自信のある証拠でもある。
「え?」
 なんつって、気づかなかったフリとかしてみた。振り返ると、彼はひとり微笑んでいた。
「1対1ですか??」
「ええ、やりません?」
「あ、ええ、まあ……いいですけど……」
「じゃあ、よろしく」
「よろしくぅ~」

 当然、ボールは僕のマイボール。置いてきてるのを僕は知ってるし、彼ももうその予定だったんだろうさ。
 その場ですぐに開始。
 トスアップでボールを渡す。返ってくる。また渡す。
 彼ももうお馴染みなんだろう。お互い慣れたもんだ。
 最初の“打つよ?? 打つよ?? 打っちゃうよ??”の駆け引きのあと、彼がゆったりとしたドリブルを始めた。
「いやぁ~、もう2年ぶりっすよ」
「へぇ~、そうなんですか??」
「おれ、SOSEでやってたんですよ。でも高校やめてからずっとやってないっす。かなりひさしぶりっす」
「ああ、SOSEね」
「ええ」
「……なるほど」
「どっかでやってたんですか?」
「ああ……4年前まではやってました」
「どれくらいやってたんですか?」
「専門学校と高校と中学と……」
「え、高校どこですか?」
「啓成です」
「ああ、あぁ~あ、啓成」
「……間違えました」
 笑ってた。
 こんな感じのやり取りも懐かしい。
 これが現役のころだと、「どっかでやってたんですか?」が「高校どこ?」とかになるだけの話だ。
 もう何度目かのゴールを決められ、僕がまたボールを渡したときにTシャツを差しながら訊いてみた。
「“北海道”なんですか?」
「あ、これっすか?」
 やっぱしいまだにそれだけ通じるらしい。
「いや、中学のときっすから、もう全然ダメっす」
「ああ、そうなんですか」
 そのときすでに、コート上には僕と彼しかいなかった。
 これもまた体育館ではお馴染みの光景。
 自分よりうまいとか、格の違いを感じた人たちが1対1とかゲームを始めると、たいがいの人は自然とコートの外へはけていく。そしてきちんと体育座り。
 見学にまわるんだな。
 あるいは、コートのなかに立ってはいるけど、シュートも打たずにボールを腹に抱えて見てる人。
「ズボン脱いでいいっすか?」
「どうぞ」
 デカいぶっかぶかの長いズボンを脱いで彼がまた戻ってきた。とても涼しそうだ。
 やっぱり、ただでさえデカいハーフパンツをさらに下げていた。
「いやぁ~、もう全然ダメっすね」
 また僕がボールを渡す。
「足が動かないっす」
「君に同じく」
 またやられる。
 こういう人だと、ディフェンスしててもおもしろい。
 手渡してウズウズ蠢いて打った3Pがはずれた。
「現役んときはこれがあったんすよ」
「わかります」
 僕の番。
 まだ何十回もやったわけじゃないのに、わりと汗をかいてきてしまっていた。
 体育館で汗が止まらなくなるほどイヤなことはない。煙草を吸いに行ったとき、とても冷える。
「ラスト1でお願いします」
「了解です」
 はずした。
 3Pラインまで戻ってボールを渡す。
「すいません」
 彼が言ったこの言葉にはちょっと妙なニュアンスを受けた。
 結局、やられた。
「ありがとうございました。
「あ、いえいえ、こちらこそどうもでした」
 いやぁ~、とても楽しいひとときだった。

 缶コーヒーを買って、いざ喫煙所へ。
 彼がいた。一緒に来ている人といた。
 一緒に来ている人が僕に気づいたらしい。それまでとはちょっと違う雰囲気になった。
 僕のことでも話してたんだろうか??
 ちょっと気になった。
 扉を開けて目と微笑だけで挨拶した。
「ちょっとタオル取ってくるわ」
 彼がそう言ったっきり帰ってこなかった。一緒に来ている人も煙草を吸い終え、体育館へ戻って行った。
 彼はとてもいい笑顔だった。明るく分け隔てなく人懐っこそうな印象を受ける。
 浅黒い肌。メッシュの金髪。鼻にピアス……人間、見た目じゃない。
 それを改めて痛感させられる笑顔だった。
 ここ最近接した人のなかで、ここまで話やすいと感じる人もいなかった。
 関係ないけど、僕は普段、缶コーヒーはほとんど飲まない。
 でもバスケのとき、体育館に行ったときは、そのとき自分が飲みたいものを飲む。好きなことをしてるときは、好きなものを飲み、好きなものを食べる。
 以上。
 煙草を消して、僕も体育館へと戻って行った。

 シュートを打ってたら、また彼がやってきた。
 今度は、シュートをはずしたボールを拾ったついでみたいだった。でもたぶん、このときはずしたのは、わざとと見た。
「ゲーム出ます?」
 19時からはゲームのみとなる。
「ああ、なんかあったね、そういうの。出るんですか?」
「ええ」
「じゃあ、出ます」
 二人でコート脇に置いてある得点板まで歩いていった。
「この名前の下に“2”って書いてあるのって、2人ってことなんですかね?」
「さぁ~。そんな感じじゃないですか?」
「じゃあ、おれの名前で“2”って書いておきますね?」
「はい」
「よろしく」
「よろしく」
 19時になった。
 体育館の職員の人に名前を呼ばれ、まず第1試合目。
 どうやら片方のチームは、いっつも来ている人たちらしく、一般の人たちばかりでけっこう上手くやるらしい。
 まだ僕たちの出番じゃない。
 とりあえずバッグの隣に座って観ていた。
 僕はいつも入口側の一番奥にバッグを落とす。すぐ帰れるようにだ。
 観てる分には、普通にうまい感じだった。
 それが終わって、僕はシュートを打ちにコートに出た。
「あ、試合ですよ?」
 彼が呼びに来た。
「あ、ああ」
 僕はボールをバッグのそばに置いて、コートのセンターサークルあたりに集まっている人たちの輪に混ざった。
「よろしくお願いします」
「よろしく」
「よろしくっす」
 僕と彼と、ほか3名。チームメイトになるらしい人たちと、挨拶した。
 1人、小学生ぐらいのチビッコがいた。だれかの弟くんらしい話ぶりだった。
「ねぇ、おれの出番ない?」
「いや、人数足りないからおまえも出ろ」
「やった」
「マンツー?」
「じゃあ、おれ……8」
「じゃあ、5」
「7」
「4は? いないじゃん」
 チビッコが心配そうだった。
 僕が手を挙げた。
「4です」
 そして一応、試合前の整列。
「相手、中学1年なんで」
 僕らのほうのチームに向かって職員のおばさんが言った。この言葉の意味はきっと、僕の受け取ったものであってたんだと思う。
 だけど彼は違ったらしい。
「中学1年なんて、一番アブラのっててイイ時期じゃないですか」
 隣で彼がチャカすように話しかけてきた。まあ、彼が北海道選抜だった時期でもあるな、たしかに。
「一番おいしい時期ですねぇ~」
 僕も便乗しておいた。
 そしてジャンプボール。
 案の定……
 試合開始早々、まずジャンプボールのボールは相手チームに渡ったんだけども、それからすぐに“北海道”くんにパスカットした。
 速い速ぁ~~~~~~~~~~~い!!
 そのまま3人を一気に抜き、ゴール直前で彼を止めようとそのコースに入ろうとした1人の中学生が吹っ飛んだ。オフェンスファウルもギリギリだった。

 どうやら“手加減”という猿芝居は彼のなかにはないらしい……
 走る走る。狙う狙う。
「開け!! いったん開け!!」
 速攻のときも、ほかの選手がボール持ってりゃ、うしろからそう声が飛ぶ。
 ここはひとまず、速攻で真ん中からじゃなく、ムリせずいったん開いてゆっくり攻めようというときによく出る指令。
 でも僕がボールを持ってるときは、こうだった。
「あ、開いてもだいじょうぶっすよ」
 でも自分がボールを取ったときは、ディフェンスが何人来ようとお構いなしで、目指すはゴールのみって感じだった。
 まるでイノシシだ。
 きっと高校のときとかでも特攻隊長だったんだろう。
 ひさびさということもあるんだろうさ。アリンガローサ。
 もう彼は止められなかった。ディフェンスだって手は抜かない。
 途中、半ばあきれたような職員の人の声が聞こえた。
「1点ぐらい取ってみなさぁ~い」
 もう僕は笑うしかなかった。
 で、僕もそのへんは例外じゃないわけで……
 きっとみなさんそうだったんだと思う。
 もうそういう流れになっていた。
 結局、この中学生との試合は、5分間の流しで43対2という結末で終了のホイッスルが鳴った。

 勝負となれば、相手が小学生だろうが中学生だろうが、徹底的にたたきつぶす。
 いや、負けたくないだけなんだろうな、きっと。
 ……嫌いじゃない。
 むしろ好きだね、こういう人。
 あぁ~、大好きさ。

 で、また何試合か観戦したあとで、僕らの試合だった。
 このときがこの体育館では強い感じのチームとの対戦になった。
「いやぁ~、もう全然足動かないっす」
 “北海道”くん。
 ということで、なんだかいつの間にか満場一致でゾーン・ディフェンスをすることになっていた。
 外野から見てるとうまく見えても、実際に手合わせ願うと、そうでもなかった。そして、そんなことはよくある。
 なんかもう、結局ボロ勝ちだったんで、特筆すべきことすらない感じ。
 しかしながら、彼はとってもマジメな選手だった。これが一番驚いた。
 体育館のバスケであそこまでしっかりと声をかけ合ってディフェンスをやる人は、今まで現役のころから合わせても、会ったことがない。
 途中には、かるく話し合うぐらいの場面まであった。
 とても気持ちがいい。
 実際にはどうだか知らんが、彼が高校をやめたのは、ちょっとバスケにマジメすぎたんじゃないかとか想像してみたり……
 一緒にやっててとてもいい選手だと感じるところが多かった。
 “見せるバスケ”ファンっていうのも合ってたってのもあるんだろうな、たぶん。
 年は違うけど、同じチームでやってみたいと素直に思えた。
 まあ、最終的に見てみれば、すべての試合で圧勝だった。

 やっぱなぁ~。
 バスケに限らず、“次なにすんだろう??”ってワクワクさせてくれる人ってのは、一緒にいて楽しい。
 ひさびさに笑ってバスケができた気がする。

 20時半になり、もう試合はないだろうってことでバッグを持ち上げた。
 そしたら、入り口の反対側から彼らもラケットを持って走ってきた。今日は隣のコートがバドミントンの日。

 着替えを済ませ、体育館を出るとき、彼に会った。かるく頭を下げた。
 1回外に出たんだけど、やっぱりと思いなおして喫煙所のなかを覗いてみた。
 彼がいた。
「いやぁ~、今日はホントひさびさに楽しかったです。ありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそありがとうございました。またお願いします」
 握手を交わして、僕は体育館を出て行った。

 雨でも行った甲斐があったってなもんだ。
 今日の雨は、乾きかけてた汗を惜しむように僕を打った。
 田上くん、ありがとう。


 ……と、こちらは週末のうちから書いて下書きとして保存したまま、今日まで書かず。
 おしなべて1時間。保存期間は3、4日。
 ちゃんと書こうよ、おれ。

 ハイ。

  • July 6, 2005 1:55 AM
  • 松田拓弥
  • [ ゲロ古 ]

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