思ってただろ?
 と思っただろ?
 今ごろ ──── あぁ~、あの辞書より厚い『天使と悪魔』のヴィジュアル愛蔵版のほう読んでるんだろうなぁ~とか思ってただろ?
 そして、自分もちょっと買って読んでみよっかなぁ~とか思ってたり、実際に買って読んでるって人もいるだろ? ベッドの上に根っころがって仰向けに読めないから、いっつもうつ伏せで読んでるけど、すぐ腰痛くなってきちゃって、そのせいにしてそのまま寝ちゃってないか?
 えぇ~!? 一緒に読んでると思ってたのにィ~とかは言いっこなしだ。
 そう、俺様が『天使と悪魔』を読みはじめたのは、つい2日前のこと。
 その日は完全に『天使と悪魔』しか頭になかったんだけど、たまたまそのとき『このミステリーがすごい!』の大賞だというこの本を見つけてしまったのだな。
 帯にも書いてるからあえて略称のほうも書いてみるけど、『このミス』っつーのは、なかなかこれ、侮れない賞なのよ。
 最近のじゃ『チームバチスタの栄光』が映画化されたじゃん?
 あれ、すっげぇおもしろそうじゃん?
 ひさびさに邦画で “ これ観てぇ!! ” って感じたよ。主演なのか、あのいい人そうな男の人が好きなの。けっこう
 っつっても、俺様、初めて買ったんだけどさ。『このミステリーがすごい!』の大賞受賞作品。
 前にも何冊か買ってると思いきや、今、帯の受賞作品を確認してみたところ、1冊も買ったことなかったという事実が判明。
 驚愕。
 もう今は古い作品だけど、映画化もされた横山秀夫さんの『半落ち』ってこれだと思ってたのに……あの本はホント、胸にジミ~ンってくる。
 俺様、この人の小説、好き。横山さんの書く文章が好き。
人生、五十年
 岡崎昂裕さんの『依頼者』とか井上尚登さんの『 T.R.Y. 』っていう本とかもそうだと思ってたのにな。
 『 T.R.Y. 』は、バイト中にずっと読んでたんだけども、あのラストにたまたま俺様のなかでも30本ぐらいの指には入るぐらい大好きな EXILE の『 DISTANCE 』って曲がかかって、一人でビッタビタに浸ってた。
 で、なんだ?
 名前ばっかデッカくなって、どこかしらでなにかと小耳に挟むけど、実際にはたいしたことない?
 “ このミステリーがすごい! ──── って言ってた! ” って感じ?
 でもって、意外と歴史は浅かったみたい。まだ7回らしい。
 いやぁ~、でも、『半落ち』はそうだったような気ィしたんだけどなぁ~……
 まいいや。
 とにかく柚木裕子さんの『臨床真理』を読んでってっつーことで。
つまんねぇ。
ん~……なぁ~んか、つまんない。
読了感が特にない。感想が、その内容の重たさに比べると、恐ろしく軽い。そして、薄い。
 「つまんない」だけでやめようかとも思ったけど、やっぱりそれじゃあ、なんら人の役に立たないものになるので、やめ。
 しかも、なんの説得力もない。
 いや、ひとりの人が一生懸命に、人生を賭けて書いた作品を、否定することのほうに説得力を与えるっつーのは、どうかと思う。やっぱ自分自身も同じ側の人間に立とうとしてるわけで、それはありがたい反面、やっぱりヘコむ。
 きっと作る側としては、それに対して人一倍だれよりも惚れこんで送りだしてるはずだから。
 自分の「好き」って気持ちを他人に否定されるようなもんだ。
 でも、やっぱり書かせていただこう。
 いや、書きたい。
 そういう意味で、書かせていただこう。
 そう思う。
 本当にこの小説に、大賞賞金1200万円の価値あるか?
 今回はダブル受賞で半額らしいけど、その価値もないように思ふ。
 審査員の人たちももう一つの作品と真っ二つだったらしい。
 主人公の存在が薄い。完全に脇役のほうが立ってる。
 心理的な面が全然伝わってこない。行間に持たせてほしい余韻みたいなのがなかった。
 だれが主人公なのかよくわからない。
 俺様としては、臨床心理士の女の人がそうなんだろうと思うんだけど、それは単純にその人に占める文章量が一番多いように感じたってだけのこと。
 個人的には、一番の気違いがこの人なんじゃないかなと。
 なんつーの? リアリティー?
 要はこの本、すっげぇ普通なんだよな。印象に残らないの。
 まま、フィクションにおいては、この普通さ加減っていうのを出すのが一番難しいところなんだろうけど、それに対して賞を準備してる側も、よくそこに1200万円なんて大金だしたなと。
 そつのない文章で、しっかりとまとまってる。
 きっと書く前の段階で、もうしっかり書きたいこととか決まってたんだろうなとか思った。
 感じたのは、書いてて自分でおもしろかったのかっつーこと。
 自分で書いてるうちになんかおもしろくなっちゃって、ちょっと話が逸れたりとか全然しなかったような文章。
 読んだことないけど、なんかの論文みたい。
 逆に、このページ数の枠内だけで、物語の全部がきっちりおさまっちゃってるぐらいの厚みなのかな。読み終わった感じ、もうこれ以上、特に書き込むところもないような気さえする。
 俺様にとって一番堪えたのが、会話文のおもしろくなさ。
 ホントそのへんの友達どうしがしゃべってるような会話の調子なのよ。難解すぎる会話もどうかとは思うけど、機械どうしのおしゃべりみたくもある。
 そこに持っていくのはきっとものすごい難しいことなんだろうけども、逆に読む側としては、そこに楽しみを見出すっていうのも、同じぐらい難しかった。
 論文の例として “ たとえば、こんな会話がありました ” っていう前書きがついてそうな会話文なんだよな。
 ちょっと心理学の本とか読みすぎちゃった?
 っつーか、柚木さんって、実際にお医者さんかなんかなのか?
 なんか物事が偶然もなにもなくて、成り行きどおりに物語が進んでいくから、すぐ終わりが見えてしまった。
 これこそ “ 論文 ” って感じた部分。
 なにからなにまで、事細かに読めた。先輩の刑事のほうがバカすぎる。俺様、こういうやつ嫌いだ。あんな先輩なら、刑事だとしても絶対相談なんてしねぇな。
 “ 心理的な駆け引きならお手のものなのだ ” とか小説内で言ってるけど、ちょっとあまりに安易すぎ。 “ 心理戦のプロ ” というなら、もう二歩ぐらい向こう側の心理を突いてもらいたいもんだ。
 柚木さん、ちょっと物書きにしては頭よすぎるんじゃないかなぁ~とか思ってみたり。
 なんだ?
 なんかありきたりだけども、俗にいう “ グレーゾーン ” っていうものがまったくないように感じる。
 精神的な奥行きがないっていうか、心理とか精神って、きっとそういうもののページをめくっていくようなものだと思うんだよなぁ~。
 気にならないの。全然。
 なにが臨床 “ 真理 ” ?
 なんかただカッコつけたかったのかなぐらいにしか思えないこのタイトル。
 あ、あれか。
 “ シニカル ” って、 “ 皮肉 ” ってのとかかってんのか?
 “ 皮肉な真実 ” ?  “ 望まれざる真理 ” ?
 “ 真理とは皮肉なものである ” ?
 “ 心理の裏側に潜む真理 ” ?
 それを一緒になって探し、導くのが臨床真理士?
 王道っすねぇ~。直球っすねぇ~。
 でも、本当に仕事として現場に立ってる臨床心理士さんがこの本読んだら、どう思うのかちょっと興味ある。
 っつっても、これぐらいのこと書けって言われたら、俺様なら全部想像だけで書いてしまいかねないな……
 まあ、逆に真理つきすぎっちゃー、そうなのかな。
 それは単に “ 常識 ” っていうだけのこと。もっと言えば、居酒屋でしゃべってるおっさんたちのにおう論争。
 真理はホント汗水垂らさずブーブー文句垂れ流すだけのおっさんたちに学べ。
 臨床は、病んでるやつを見ればいい。
 それはなぜなら、人の心に巣食う夢のなかのチョコレートみたいなものだから。
 で、この本で一番気になったっていう点、それは、誤字脱字が多すぎること。
 読んですぐ明らかなのあったし、中盤、終盤、随所に盛り込まれてた。
 “ 失語症 ” っていうのが小説のなかで書かれてるから、あえてそういう表現なのかとかいろいろ考えたけど、そうじゃないよな。
 これは出版社である≪宝島社≫さんのほうにも問題あると思うな。
 実際には、そこが一番この本で残念なとこ。
 俺様としては、ダブル受賞のもう一つの作品のほうを読んでみたい。
 と言いつつ、買ってから一気に読んでしまったのも事実。
まあ、だれかに “ これ、オススメ? ” って言われたら、俺様としては “ 貸してやる ” と答える。
- June 6, 2009 3:17 AM
 - [ BOOKS ]
 







