俺様はカレーライスが大好きなんだ。だから、毎週土曜はカレーの日。

　いやはや、今週は1週間のうち6日カレーを食べた。うち1日は、メシ食ってる時間がなかっただけの話。
　毎週土曜はカレーの日。

　っつーわけで、ここ3ヶ月ぐらい、毎週毎週、土曜日はカレーを作っておる。

　っつーわけで、今日もカレーである。言うまでもない。

　材料は必ず、バイト帰りに24時間営業してくれてるわりと近所な≪東急ストアー≫で調達。まさかまさかの売り切れの際は、もっと遠い近所の≪フードセンター≫まで行く。
　先週は、先にもっと遠くまで行ったけど、結局、手羽元が売り切れだったようで、わりと近場なほうも行った。
　欲しいものがあってそこに行ったのに、そこに欲しいものがないと、すっげぇ腹立つ。たいへん治安が悪くなる。
　妥協なんてしない。妥当なところでのすり替えもしない。
　欲しいものを買う。

　帰宅後、なんやかんややってから、カレー開始。
　途中、たまたま先週はウメくんが起きてきた。いつものように、彼はすぐさま洗面所へ。
　きっと迷惑かけてるだろう。めずらしく俺様から話しかけてみた。
「あ、ここ最近ずっとカレー作ってます。今週もまたカレーです」
「ああ、あれ?」
「ええ、とっても」
「すげぇ量だな」
　テーブルの上の材料を見て、彼はつぶやいた。
「ああ、一回分ね」
「え?　あれで一回分?」
　彼はヒゲを剃るその手を止めた。
「どっかの学校のクラス一つぐらいまかなえるんじゃない?」
「かもね」
　それがこれ。

　たしかにそのとおり。
　以前からぬかしているとおり、俺様は料理をするとき、その材料からできあがるだろう量を推し測るっつーことができないらしいのだな。
　というより、しない。
　それはなぜなら、そのとき食べたいものを、食べたいだけ入れるから。
　ちなみに、干し椎茸は2袋入れる。さらにちなみには、あの戻し汁って、なんかまんこくせぇのな。
　なので、これ以外に入れる細かいものは、かなりおかしいんだそうだ。
「いや、ニラはやめようよ……」

「しょうが」
「しょうが?　しょうがって、あのしょうが?」
「うん、しょうがって、その生姜」
　バイトの人に俺様のカレーについて話した。
　というより、その人のカレー論を訊いてみた。訊いてみたかった。人のカレーについても訊いてみたかったのだよ。

　その人は、カレーにじゃがいもを入れないんだそうだ。
　カレーじゃねぇ。そんなのカレーじゃねぇ。
　“ None Potato Curry ” は、“ Curry, None ” だ。じゃがいもあってのカレーだ。
　俺様のカレーは、見てのとおり野菜が盛りだくさん。じゃがいもは4つ使い、たまねぎは2つ使う。
　先週は、なんとなく買ってみたにんにくを2つ使ったら、あまりにもクサかったので今回は1つに自粛した。腹は壊れなかったけど、なんとなくギンギンしてたのは言外にあった。

　その人 Say, “ 具、多すぎだよ。具ばっかじゃん。そんなのカレーじゃないよ。キーマだよ、キーマ ”

　たしかにそうかもしらん。
　“ キーマ ” もカレーだと個人的に感じたけど、一般的にイメージするカレーライスではない。それは認める。
　カレー第一投目は、やっぱり具があまりにもすごすぎて、ご飯より多くなる。
　お皿が平たいやつだと、ご飯の上を転がってえらいことになる。それを支える手は熱いわ、なんか端っこから垂れそうになるわ、それを垂れさせまいと舐めったりすくったりしなきゃならんわで、僕の掌はカレー大戦。
　その人のカレーに入る野菜は、すべてみじん切りらしい。
　それもわかる。それもいい。そんな気分の日もあるさ。

　でもやっぱ、ごろりィ～んとしたポテイトぉ～が食べたいじゃない。
　ご飯は少なめで、カレーのルウ足し足ししながら食べたいじゃない。
　ルウが多いって、なんかちょっぴり幸せじゃない。
　ホントはもう今すぐにでもなんか食べたいぐらい腹ペコリーナなのに、それをグッと、嗚呼、グッと堪えて食べるカレーって、またゲロうまじゃない。
　そんなカレーって HAPPY じゃない。
　なんか HAPPY じゃない。

　だから俺様は、完成するまでに何度も何度もつまみ食いをする。いや、しなきゃならないの。
　買ってきた1回分の材料を、すべて使おうと思ったら、あの鍋じゃまったくもって入りきらないのだよ。
　具を減らし、汁を減らし、全体のカサを減らし減らしつ作り上げていかないと、うちのウメくんが持ってきてくれた圧力鍋では、ブッシュブシュ吹いちゃうのよ。締まりがきかないぐらいおなかの筋肉が緩んでしまった三十代の女たち、出産を経験しててもしてなくても “ ボルチオ性感帯 ” が発掘された女たちも真っ青なぐらいプシューッ、プシューッて吹いちゃうの。
　あぁ～、ダメぇ～、なんか出ちゃう～、出ちゃう～……あぁ～、ダメぇ～、おしっこ漏れちゃうよぉ～……あぁ～、おかしくなっちゃうよォ～……
「いいよ、おかしくなっちゃいな。おかしくなっちゃいなよ」

　プシャーぁ～ッ ──── んーッ!!!!!!

　そんな幾ばくかの腹ペコたち。おかげでうちのコンロは、今いろんな汁が染みこんでる。
　うん、茶色いものから透明な汁、はたまた白いものまでさまざまだ。
　そこはまさに、女の坩壺やぁ～!!