プライムカレーは超便利っす。

 やっぱり俺様は、やっぱりカレーが、やっぱり大好きみたいだ。

毎週土曜はカレーの日。

 そんなことを決めこんだのは、まだまだ昨日の今日のことのように思えるが、きっともうけっこう昔。
 あんときはマジでハマッてた。ホント、毎週毎週、ほぼ半年ぐらいカレーライスばっかし食ってたもんな。

 とはいえ、めっちゃ時間かかるのは陽を見るより明らかなんだから、バイトから帰ってきてすぐ取りかかればいいものを、やれブログだ、やれ映画だ、やれ映画の感想だ、やれ女だ、やれ女だ、女とやれだなんだのと、しこたま時間を費やすこと正午過ぎ。
 そのあいだ、現在なまら同時進行で二人分の洗濯を片す。映画を観ながらそれまで干されていた洗濯物をたたみ、洗濯機が止まれば、干す。
 ホント、まさに “ 洗濯屋しんちゃん ” なのでありますよ。
 干し終わったら、カレーの仕込み開始。
 右斜めすぐうしろの洗濯機は、爽やかな “ ダウニー・ブルー ” の香りとともに、おれら一週間分のしがらみや不安、Yシャツににじむ心のしみなどをグルグルグルグルまわしつづける。

 それすなわち、合理主義。
 自分がやりたいこと以外のスペースで生じる “ ムダ ” は、あんまり好きじゃない。

 だから俺様は考えた。

 ──── チーン。

 レンジから手羽元とひき肉を取りだしーの、今度はササミ入れーの、野菜切りーの、スライス椎茸戻しーの、ベジタリアーノ、まん汁クセーの、戻し汁。
 いっちいち、なにもかもに手間がかかる。旨いもんが喰いたい。
 どっかのグルメぶったブタが言ってた。シェフも言ってた。

料理は、手間をかけるほどに美味しくなる。

 そうか?
 喰いたいときにササッと作れて、チャチャッと出てきてくれたほうが旨いと感じるのではなかろうか?
 牛丼とかファースト・フードとか、ラーメンとかが美味しいのって、そういうことではないのか?
 特にラーメンなんて。

「あ、ラーメン食いたくね?」
「いいねぇ~」
「行く?」
「行っちゃう?」
「イッちゃうの?」
「うん、イッちゃいたい。イッちゃう」
「よし、じゃあ、イッちゃいなー!!」
 俺様はいつもこんな感じです。これは、いたってノーマルで、リアルかつシビアな視点から見た俺様の日常会話のひとコマ。
 着く。頼む。
 美味しいお店というのは、だいたい “ 五分以内 ” なんだそうだ。
 食べたいと思ったときに、すぐ食べれるってこれ、重要でしょ?

 ひっさびさに食べるハンバーガーと、持てる勇気を振りしぼって買ったカップヌードルほど旨いもんなんてのは、この世のなかどこ探したって見つからねぇ。
 愛情たっぷり入れてもらったところで、賞味期限切れの素材を平気で使っちゃうなんざ、そんなもんはクソっ食らえじゃ。
 それは単なる、自分への愛情じゃけぇ。

 時間と手間をかけて、じっくりゆっくり作りあげたものが美味しいのは、自分以外のだれかがそれをしてくれたときでしかない。美味しいと感じるのは、単純に嬉しいっていうのと、ねぎらいだ。
 腕によりをかけて作ったご飯を、彼氏が帰ってくるまで食べずに待ってるときの自分に向いてる感情と大差ない。そして、彼氏が帰ってきて一緒に食べたとき、たいした感想もなく、あってあたり前のように食べられると逆上してしまうときの味に似てる。
「いいよ、じゃあ、もう二度と作んないから。自分で勝手に作って食べれば」
 その言葉を吐いたときの後味の感触だ。そう、この文章では “ 勝手に ” っていう部分が、なにより重要な味噌味。

 “ マズいもんはホント一切手ぇつけないで食べないから ” って言っておくのが、俺様の基本姿勢だ。
「昔、一応口に入れた瞬間、そのまま出したことあったな、そういえば」
 作った側としては、ねぎらいや感謝の気持ちを持ってもらうことこそ、ごくあたり前だという気持ちで作る。
 変に期待とか逆上とか、それをそのままあたり前として出されても困る。それが食べる側の心構えだろう。
「え? それはさすがにひどくない?」
「まあね、たしかにひどいかもしらんやな。いやぁ~、でも、マズいもんはなにしたってマズいでしょう。ブサイクは、なにしたってブサイクなのと変わらんな。根本から変えるような整形でもしない限り」
「そこまでいくともう、ご飯とか彼氏彼女とかじゃなくて、人間として最低だよね」
「いやいや、人間としては最高でしょう。その相手にとっては最低なだけで」

 と言いつつも、出されたら “ 旨いね旨いね、やるじゃん ” と食べつづけるのが、実際に現実としての俺様の基本姿勢である。
 作ってくれたものを口からそのまま箸にも載せず、ちょっと味わった状態でベロンチョって皿に戻すなんざ、んなことあるわけがねぇ。だぁ~れがそんな恋人どうし以前に、最低限のマナーにすら違反するような行為をするでしょうか。
 そう、ここで問題なのは、そのような行為をすると言った時点で、そのまま信じられてしまうというような普段人様に見せてる俺様の人間性。
 “ うそォ~、ホントにィ~? ” とかいうひと言は欲しいものだ。
 そこが一番の問題であり、疑問。

 時には、ある程度の下準備と演出の施された安心感っていうのも大事なんだな。
 いや、むしろ、そっちのほうが重要だと思ふわけ。
 人間、なんの前触れもなく手放しの状態で自然と安心が湧いてくるほど純粋にはできてねぇ。
 自身の過去や経験、それまでに得たあらゆる情報、そしてそこから見える先の推測から生まれてくるのが、安心感というやつなんだな。
 安心というのは、気持ちではなく、それが許されるであろうという状況なの。


 とまあ、そんなこんなで、ハウスの『 PRIME 』はカレー料理に超便利なのである。
 じゃあ、プライムカレーのなにが、そして、なぜにプライムカレーが便利なのかというと、一番は、すぐ粉状になってくれること。

 はい、次。
 美味しいこと。

 次。
 カロリーが抑えられてるらしいこと。


 今までカレーライスを作るときは、前にテレビで “ カレーのルウは、市販されてるルウを何種類か混ぜて使うと、より美味しくなりますよ♪ ” と言ってたので、それを実行してたわけだ。
 たぶんいっつも4、5種類ぐらい使ってたかと思われる。
 必ず入れるのは、グリコさんの『 ZEPPIN カレー』と S&B さんの『地中海カレー』、そして、フリーデンさんの『スパイシーカレー』というルウ。
 いずれも中辛。
 なかでも、フリーデンさんの『スパイシーカレー』が一番旨いんじゃないかと思ってる。パッケージには “ FRIEDEN / SPICY CURRY ROUX ” と書いてたらしい。
 あとは、ハウス食品さんの『北海道ホワイトカレー』だったり、グリコさんの『2段熟カレー』だったりする。甘口には『こくまろカレー』か『バーモントカレー』か。

 そう、混ぜるのよ。全部混ぜるの。
 水をたっぷり入れて、それがどろっどろになるまでルウを使うわけ。
 煮込むのにも時間がかかる。
 どろどろ感が足りないからって、まだ煮込んでる最中にあんまりルウを使いすぎると、冷えたときが大変になる。ほぼ固形。そして、なまらしょっぱい。
 なので、いったんちょっと冷やしてから、また煮込むわけだ。

 いや、旨いよ?
 旨いさ。そりゃ旨いさ。
 けどねぇ~……

 ちょ、おま、それはちょっと、チョ~~~~~~~~、手間。
 映画一本観賞完了。

 なまらめんどくせぇ。
 こっちゃ~よ、なんまら腹へってんだわ。
 一日寝かしたほうが旨いったって、腹へってんだから早く食いたいんだわ。背に腹が変わっちまったら、アナルからニョッキが顔出してるのと同じ状態になっちまう。


 ある晴れた昼下がり、俺様は野菜炒めを作っていた。
 まだまだゴー・トゥーベッド・インするまでの時間はあるけど、さすがにカレーライスなんて作ってらんない。でも、カレー味が恋しかった。
 フリーデンさんの『スパイシーカレー』が食べたいけども、いっつも使ってるルウは使えない。
 ふとプライムカレーが残ってた。
 入れてみた。

「 ──────── うま

 そう、いっつも使ってるルーはさ?
 一つひとつのブロックが凝固した状態で、たいがい固形じゃん?
 でもって、お水に入れてやらないと溶けてかないでしょう。溶けるのも時間かかるし。

 が、しかし、ハウスさんのプライムカレーは違うのだよ。
 フライパンで使ってみて初めてわかったんだけどもさ、油なしで野菜から出てきた水分のみの状態のなかに落としても、溶けるのよ!!
 っつーか、水分なしでもからむのよ!!
 それはつまり、すぐにボロボロと砕けるの。これ。

 野菜を炒めるのに使ってた木ベラでちょっとゴツゴツ押っつけてやれば、すぐさま粉末コンソメ状態。
 あらあらビックリ、あらビックリ。
 ひらめきと感動で、俺様思わず “ なんつってキーマ ” に向かって『 Hey Ya! 』でございましたよ。
 もうもうもうもう、気持ち的にはこんぐらいのテンションと勢いでイマジネーションにはしゃぎまくったな。

 プライムカレーのルーってのは、いわゆる “ 泥のおむすび ” って感じ。
 さすがはニッポンだけあって、過剰梱包の典型。8つだかそんぐらいのブロックごとに個別でわけられてる。
 まあ、それは全然関係ないんだけども、これで一気にルウの量が激減したわけよ。
 今までのがっつりカレーライスに入れてた同じ野菜の量に対するルーの量がよ!!
 っつーか、がっつりカレーライスには何個もかけらを落としてたもんが、たったひとかけっすよ?
 しかも、フライパンで作れんだ。あっためなおすとき、鍋のほうが焦げることもなければ、カレーがにおい立つこともない。マイ・ホームでは “ マーブルフライパン ” なわけなので、激烈らくちんぽ。

 いやいや、侮るなかれ?
 ひとかけのプライムカレーのブロックルウだけじゃ、しょせん “ カレー味 ” 程度でしょとか思ってんだろ。
 おまえ。
 おまえ。
 おまえ。
 違う。違うぜ?
 ケツの穴から覆すぜ?

 まあね、俺様も最初はカレー味がほしかっただけだったからな。
 ところがばっこん、なんまらカレーしてんのだよ、奥さん!!
 ちょっとした火遊びのスパイシーじゃすまないんだよ、新妻さん!!

 ががが、がっつりカレーライス。

 俺様はたいがいなんでもご飯の上に乗っけて食べてしまうために。
 しかも、お水に溶かして拡張させてるわけじゃないので、むしろ、どろどろのカレーライスより味が濃いのだ!!
 これ、ビシ ──────── ッとくんぜ?
 最初の試作品では、あまりに味が濃くてお水を足したぐらいなもんさ。

 それでいて、カロリーオフときてる。
 そりゃそうだわな。あんだけダ~バ~ダ、ダバダバダっつってルウ入れるんだもの。
 そりゃ脂も熱も多くなる。それ必然。

なんつってキーマ。 :: 何枚か違うアングルで撮ってみたものの、ほぼピンボケで使えぬ始末。 美味しいよ。
 俺様開発による、俺様のための “ なんつってキーマ ” ──── キーマカレーの提議がわからないため。
 どろどろしてなきゃ、みんなキーマ。

 って言っても、実際やってる人多いんじゃね?
 まあねまあね、同じ野菜の量ではあるけど、カレー食べれる回数も激減する。
 前に乗せた俺様カレーライスの量で、なんつってキーマだと、がんばっても4回。
 一人用か、せめて新婚さん用。
 でも、旨い。
 濃縮還元でございます。

 まま、野菜の旨味が溶けだしたのがうんぬんかんぬんな人はどうかと思うけども、俺様は、野菜の歯ごたえが大好きなので、むしろ。

 どうだい?
 ちょっとしたカレー味なら、1ブロックも必要ない。そんなときのために、一つか二つは粉末カレーにしといてもいいんじゃねぇのか?
 ちょっと試してみないかい?

  • August 9, 2008 10:11 AM
  • 松田拓弥
  • [ 料理 ]

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