I go Election

 選挙権をもらって早5年と半分。
 たぶん、選挙に行くなんてのは最初の年の1回ぶりぐらいだったろうと思われます。いや、今回が国政初参加かもしれませぬ。
 会場もわからず、その当日に初めて届いたハガキを裏返したものだから、一瞬そこを思い浮かべてやめようかと躊躇したほどです。自転車で10分もかからないところだというのに、その日はやけに寒かった。

 が、行ったのでありました。

 ~拓弥、選挙へ行くの巻~


 会場に入ってすぐ、とりあえず受付へ。
「あの……どうしたらいいんですか?」
 受付の女の人も、思わず失笑をこらえていた模様。そんな彼女はソー・キュート。
 紙切れとハガキを返してもらって、いざボックスへと歩み寄らん。ちょっとハガキの裏面に署名ぐらいはと恥ずかしくもなったのだけど、ボックスに入って驚愕しました。
 候補者の名前と党が記された紙しかない。

<こいつら、誰?>

 まあ、なんか前からポスターで見かけてた1人を除いては、ほかは誰も記憶になかった。というより、バイト先の自販機に貼ってあったポスターの人の名前がなかった。その人に入れるつもりだったのに……無論、女の人だったからという、いたってシンプルな理由です。
 近くにいたオバサンに恐る恐る近づいた。
「あの、この人たちのなんか情報みたいのないんですか?」
「あ、……ですか?」
 “……”のところは聞き取れなかったけども、とりあえず「はい」と答えておいた。
 したら、入口あたりのオッサンが小さな新聞みたいのを持ってきた。
「あ、どうも」
「あの、すいません、ここで読んでってもらえますか?」
「あ、あらやだ、すいません。はい」
 どらどらと、目の前の机の上にその候補者の情報紙を広げてみる。なんとも陳腐な学級新聞みたいでしたな。
 それぞれ第一印象は、こうだった。
<あいつに、イタチに、レスラーか……>

 当初の予定は、政策なんぞ知ったことっちゃないので、とりあえずポスターかなんかを見て“顔”で決めようというものだった。あの女の人がいたら、即決だったのに。
 が、どいつもこいつも気に入らない。
 もう見飽きた人と、イタチと、レスラーだもの。
 政治家さんだって、やっぱり顔は重要でしょう。その人の内面は、やっぱり顔にも出てくるという持論の持ち主なため、顔がいい人はやっぱりなんか内面にもイイもん持ってるという感じ。

 アテがはずれた。見事だ。実に見事だ。
 じっくりとその内容を読み進めていった。
 結局は、みんな同じような計画を呈しているような感覚ですな。福祉がどうの、経済改革、失業率とかブラァ~ブラァ~ブラァ~……

 というわけで、唯一「家族」についてのなんかを書いていた社会共産党のレスラーさんに入れておいた。イタチよりも顔はよかった。妥協だな。
 しかしながら、俺様はなんか変なところで気を遣うらしく、やっぱり呼び捨ては失礼かなぁ~とふと思ったので、候補者さんのあとに“氏”をつけてみた。これは無効になるのだろうか?
 まあいい。所詮は妥協の投票だし。知ったこっちゃないさ。

 で、次は“党”への投票。

 どこの党が、どんな策を打ち出してるかなんて、僕にとっては DAKARA のおまけ以下の価値もないので、そんなの知るはずもない。
「自由民主党……ジユゥ~、ミンシュトウ……ジユウミンシュトゥ~……ジィ~ユゥ~ウ、ミンシュトォ~……」
 とまあ、そんなふうに1つ1つの党を、その名前の響きで検討した。

 結果、自民党。

 民主は自由であってほしい。社会の下にあるんじゃないし、共産党はなんともエグい響きであり、ただの民主党は、なんともただただ退屈だった。
 というより、まず党は別に応援したい対象じゃない。そもそも、政治に党なんて作ること自体が、なんかおかしいような気がしないでもないような……ファミリー企業とか財閥みたいじゃないか。党員や政治家である前に、1人の人間であれと願ふ。


 でだ。
 今回の選挙で一番疑問に感じた場面。
 最高裁の信任だったか? 最高裁判所の判事の信任?
 まあ、そんなとこの投票というのがありました。
 たくさん名前がありました。
 が、誰ひとりとして知らない。
 財閥の党首みたいな厳つい名前から、どっかの社長みたいなのもいて、組長補佐みたいのもいて……ただ、なんの変哲もない名前というのがなかったような気がします。佐藤太郎とか小林一とか。
 裁判所もファミリー企業か?

 まあいい。
 普段からほとんどテレビを見ない僕としては、その人たちについての情報が、まったくない。
「すいません」
 またさっきのオバサンのとこまで戻っていった。
「あっちの人たちの情報ってありますか?」
「あ、それなら……」
 奥のちっちゃい椅子で、なんとも偉そうだけど汚くて、気さくそうだけども、それがまたなんとも下品な感じのオッサンが、媚びるように立ち上がった。
「はい? どうしました?」
「ああ、あのですね? この人たちに関する情報みたいのは……」
「あ、この投票なんですけどね、これはこうしてちゃんと憲法で定められたものなんですよ」
 オッサンが壁に貼ってあった紙を示しながら説明した。
<そんな能書きいいから、さっさとさっきみたいな紙だせよ。でも、あったらすぐ出すよな>
「でも、そのための情報はないと?」
「ええ。そういう情報というのは普段から耳にしたりする情報しか……」
「そうですか」
 と僕は、そそくさとボックスのなかにおさまった。

 これが今回、一番驚いたこと。
 ガッツリ憲法で定められてることなのに、なんら情報がないらしい。
 普段からもっとそういうことに興味を持てってことなんだろうけども、なんとも気分が悪い。せめて裁きをくだした案件とその判決のリストとか、人柄あたり、欲をだせば、ちょっとしたコラムみたいのを書かせたらいい。

 知るわけないじゃん。ちゃんとテレビ見てたって、そんな最高裁のことなんて何回も出るもんじゃないだろうし、そこの裁判官に関してなんて、もっと出ない。
 事件には興味あっても、その裁判官になんて興味あるがわけない。あの黒いの着てなかったら、ただのオッサンでしょうに。ちょっと厳ついとか、偉そうとか、頭よさそうとか、そんなもんしょ。

 “辞めさせたほうがいいと思う人に×を記入”

 それ以前の問題だ。
 辞めようが辞めまいが、たいして興味ない。どうだっていいような気がしないでもないし、完全に失業するわけでもなかろうに。普通に正しい判決さえ出してくれてりゃ、誰だって一緒かと……
 もし何だったら、その人が奥の部屋にいて、休廷中に耳打ちしたっていいじゃないか。あるいは、廷吏さんに判決とかコメントをちょちょっと書いた紙を、ちょっと行って法廷に座ってる人に渡してもらったり……
 憲法で決まってることなのに、なんの情報もないって、やっぱりおかしい。それなら、とどのつまりは、憲法自体が意味ないんじゃないかとも思えてくる。

 というわけで、全員に“×”をつけといた。
 そんな頭じゃ理解できない人間たちが急増中なんです。若いから理解できるってもんでもないけど、もしかしたらギャル文字で書かれた調書が読めなかったら困るでしょう。
 とはいえ、なんか女の人の名前がなかったような気もするが……そろそろ総理大臣も女性がなる時代じゃないか?
 現場のなにかを変えたいなら、とりあえずは最高幹部あたりの脳みそから変えないとな……
 もう世代交代だな。


 政治には、まるで興味が持てません。
 政治家さんほど「言うだけタダ」っていう言葉のあてはまる人はいないんじゃないかな。まあ、あのキャンペーンとかにはかなり金がかかってるとは予想できるけどもさ。
 あのスピーチさ。
「わたしは、この国の将来を担う子供たちの未来を約束します!!」
 なんかそんなようなことを拳を以て声高らかに叫んでるようだけども、これまた疑問を感じるな。
 年の関係だけを見て、少なくとも僕よりは余命長くもない人が、僕よりさらに小さい子供たちの未来のなにを約束できようか。都合よくそこだけ拾うのもどうかと思うけど、やっぱりまずは年金か?
 さらに言えば、莫大な金でキャンペーンを組んで選挙権もない子供たちに、なにをしてやろうという気になれるでしょう? なにをしようと思えるでしょうか?
 同じスピーチでも、主婦の人がわが子を胸に抱いて、荒れた手でマイクをにぎってこう言ったらグッとくるか。
「わたしはこの子を愛しています。この子のためになることなら、わたしは何でもする覚悟でおります。これがわたしのなによりの願いです」


 まあ、いいさ。そんなことはいいわけさ。
 選挙権のある人たち。そして、その子供たち。
 その人たちはたしかに自分の子供の未来も考えるでしょう。大切でしょうとも。約束してくれるなら、そこにすがりたいほどでしょうとも。
 でもさ、実際にはこの“今”の状況を変えてほしいというのが切なる願いじゃないでしょうか?
 明るい現状が、未来を明るくするってもんじゃないか?

 ハングリーな人は今こそチャンスって思うでしょうが、やっぱりちょっとそうはいかない。
 天気じゃない。時間でもない。
 きょうは雨でも、あしたには晴れる。
 やまない雨はない。
 明日は必ずやってくる。
 明日はある。
 どうかと思うね。国の状況とか経済とか、人の生活って、そこに勇気をもらえるほど楽天的にはなれないんじゃないかな。現実だから。今日の次が明日で、明日の次が明後日だから。
 だから説得力がないのか。親近感がわかないのか。僕が感じ取れないだけなのか。
 ジーパンにTシャツじゃダメか? ネクタイ頭に巻いてちゃダメか?
 まま、それもまた人間だし、そんな人を信用する気にはなれないでしょうな。
 こんなスピーチが聞きたい。
「“今”を変える。“今”を第一に、大切に努力したい。そしてそれが未来へとつながるように」


 こんな話があります。
 ジャングルへと派遣された CIA 調査員が、命令を受けました。しばらく受話器に耳を傾け、「了解」と言って電話を切りました。
 そばにいた仲間が聞きました。
「だれだ?」
「ワシントン D.C. からだ」
「了解」


 最後に、中曽根さんだか何だか、もうかなりのおじいちゃんになってましたね。で、何だか会というのがあるようで……もう引退したのでは??
 これまでの日本を支えてきたか何だか知りませんが、もう任期は終わったのでは?? 将棋でもして今後の余生を楽しんだらどうでしょうか??
 敬老の日は、あなたのためにあるんじゃないんですから。


 ざっとまあ、こんな見解です。
 もうちょっと国会とかにも華があればと……特に興味はないけどさ。
「ムダ遣いするぐらいなら、欲しがるな」
 そんな言葉がありますが、素人が口を出す世界じゃないのかもしれませんな。
 だったら、国民の参加なんぞ呼びかけないでほしいもんさ。欲しがってないのに、ムダ遣いさせるな。
 いや、もうちょっと大人になろうか……

ランキング参加中なので、これ乳首。

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