横断歩道の間

 きっとだれもが自分に都合のいい人を欲しがってるだけ。
 つらいときに支えてくれて、泣けば手を差し伸べてくれる。笑っていれば一緒に笑ってくれて。怒ってるときは一緒に怒ってくれる。
 自分のことを傷つけないまま、すべてを包み込んでくれるような、いつまでも薄れることなく興味を持ってくれる人。
 そんな人を求めてるだけ。
 だからすぐイヤな部分が見えたり離れていってしまったり、淋しさや不安に押し潰されてしまいそうになったときは、カメラのように使い捨てる。

 だけどそれがイヤだから、そうなる前に、苦しんだり泣いたり悪あがきをしたりする。
 傷つくのが怖いんだ。
 弱いんだ。

 自己主張が苦手だから、いつも自分てやつを強く胸を張って言えないまま、その場限りに流される。
 ぶつかり合ってケンカをする勇気もない。
 どうでもいいとごまかしてる。見て見ぬフリをしてしまう。
 背中を向けることで、また自分が振り返ったとき、こちらを向いて待っててくれるんじゃないかと期待しながら。

 置いてきぼりはヤなんだよ。
 前を見ても横を見ても、車がビュンビュン過ぎ去っていく横断歩道の隙間みたいで。
 怖いんだよ。

 笑いながらごまかして、泣きながら強がって。
 心がいつも無表情なら、痛みや不安も消えてしまう。そのときどこを見てるのかも忘れてしまう。
 きっといつも焦点をズラしてるんだ。
 そうすれば誰かと比較されたり否定されても、別の角度で責められる。
 見えているのに、そこは気づいていないフリをする。自分が傷ついたら、それ以上に傷つけて。
 もうどこにも逃げ道がなくなってしまったら"自分は自分"と、なんでもかんでもそれで片付けようとする。それこそ自分がそれ以外と比較してる証なのに。
 それは単なる自尊心の塊でしかない。
 真正面からぶつかってくるものには、いつでも葉っぱのようにひらりとかわせるように。
 知識だけを頼りになんでもわかったふうな口をきいて、苦しまぎれの一般論を並べ立てる。それがまるで自分の言葉であるかのように。
 そやって自分が自分のなかに埋もれてしまって、理想論や夢や希望にすがりつくんだ。
 逃げてるんだ。
 欺いてんだ。
 いつもそんな自分から。
 自分に都合がいいように。

 自分だけはいつまでも、いつでも笑っていられるように。
 もう誰一人、傷つくことがないように。

  • July 2, 2006 2:59 AM
  • 松田拓弥
  • [ ゲロ古 ]

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